香港法人を閉鎖するには大きくわけて2つの方法があります。
(1)支払い能力がある場合は、De-registration(抹消)という手続きになります。税務局(Inland Revenue Department)からのLetter of No Objectionという承認証書を取得後、会社登記所(Companies Registry)に抹消申請をし、3か月間の官報公示期間を経て完了します。通常は、8か月程で完結しますが、コロナ禍において手続きに大幅な遅延が発生しています。
(2)支払い能力がない場合は、清算Liquidation(「Winding-up」ともいいます)の手続きが必要です。大きく分けて3種類あります。
(ア)Compulsory Winding-up (第三者による強制破産)
(イ)Member Voluntary Wind-up (株主による自主的倒産)
(ウ)Creditor Voluntary Winding-up (債権者による自主的倒産)
清算手続きは、非常に複雑で、Official Receiver’s Officeという政府機関に申立後、( Liquidator (清算人)の選任、監査、債権者への通知・協議、官報公示等の手続きを経て1年以上かけて行われます。また、コロナ禍において、Official Receiver’s Officeが1月末から4月末まで閉鎖していて、相当数の未対応案件が積み上がっていて、遅延が予想されます。
しかし、上記(1)と(2)は抹消・清算手続きになり、あくまでも香港法人が閉鎖することを前提にしていて、債務超過になっても会社を継続したい場合は適用されません。 それでは、香港には民事再生法が存在するのでしょうか?
香港は英国植民地であったため、母法である英国法についてご説明します。英国ではコーポレート・レスキューという民事再生制度が確立されています(米国法のチャプター11と性質上同等)。債務超過になったものの事業再建を望む債務者は、裁判所に申請後、オートマチック・ステイ (Automatic Stay)により財産は保全され、債権者による回収行為や強制執行の行為は禁止されため、債務者は 通常の業務を続けることができます。
それでは、香港にはコーポレート・レスキュー法制は存在するのでしょうか? Companies (Winding Up and Miscellaneous Provisions) Ordinance(香港法第32章)において、残念ながら、コーポレート・レスキューを裁判所が関与する仕組みが確立されていません。現状では、民間レベルの和議による会社再建にとどまります。背景として、以前より制定に向けて何度か議論されましたが、一部の業界団体(金融関連)の強い反対により、コーポレート・レスキュー法が制定することはありませんでした。
しかし、ここ数年で、ライバルのアジア金融都市シンガポールにて、コーポレート・レスキュー法制が整備されたり、コロナ恐慌による会社再編が加速することが予測されるため、本年10月より立法会にて審議される予定です。
香港法人の会社閉鎖・組織再編・民事再生法について、ご質問がありましたら、Visence Professional Services にご相談ください。