香港新型コロナ 労務対策最新情報(2020年3月20日現在)

2020年1月末の政府の非常事態宣言以降、香港では、厳重な感染拡大措置・入国管理が行われました。2000年初頭のSARSの教訓をいかし、感染封込め措置は徹底的に行われ、その結果、他のアジア主要都市と比較し、感染者数は低水準で抑制されています。

今週になり、欧米諸国渡航者の帰国による「逆輸入」の影響で、若干の上昇傾向にありますが、感染者数は256名、死者4名、退院者数98名 となっています。
最新情報:  https://chp-dashboard.geodata.gov.hk/covid-19/en.html

新型コロナによる香港での労務環境も変化しつつありますので、労務法務の整理をします。

1.外出禁止要請

香港政府には、現段階では「外出禁止措置」を強制する法的権限はないため、あくまでも、不要不急の外出や、大人数での集会・食事は避けることを、政府からのお願いする「要請措置」に留めています。

2.従業員は出勤するべき?
2020年1月末に政府の発表により、不要不急の外出を控え、可能な限りテレワークをす るよう要請がありました。公務員に対しては、自宅待機命令が出されました。

中国政府の権限とは対照的に、現段階では香港政府には、民間企業の活動を制限することはできないため、(繰り返しになりますが)あくまでも「要請」という位置づけですので、従業員を出勤するか否かは個々の企業による判断に委ねられます。公務員は3月初旬より徐々に職場に戻るようになっています。

就業規則においてテレワークや自宅待機の定めがない場合において、後述の整理解雇・無給休暇の場合を除き、給与は発生すると考えます。

テレワークをする際、企業の機密情報が漏洩リスクにさらされます。この際、就業規則を見直す必要があるかもしれません。

3.マスクを着用義務化?

香港政府には、公務員以外の香港居住に対して、外出時マスク着用を義務化する権限は現段階ではないため、あくまでも、マスク着用「要請」になりますが、殆どの香港居民は感染リスクについて敏感であるため、外出する際マスクを着用しています。

それでは、職場で従業員にマスク着用を義務化する根拠はあるのでしょうか?香港雇用法(Employment Ordinance)において、直接的にマスク着用の義務はありませんが、雇用主として従業員の安全を守る義務があります。従いまして、従業員に感染した場合や、会社が入るビルにおいて感染者があった場合等の非常事態において(以下、「職場での非常事態」)、安全確保のため、マスク着用・帰宅することは法的には可能と考えます。

他にも、企業がはいるビルの管理規則 (Deed of Mutual Covenant (DMC))が根拠となりえます。DMCにより、管理権限並びに安全管理等はビル管理会社に委ねられているため、ビル管理会社の判断で、入館する際のマスク着用・検温を義務づけることが法的に可能になります。殆どの商業ビルでは、マスク着用・検温が義務付けられています。

マスク着用を義務化すると、従業員から雇用主に対して、マスク供給・マスク費用建て替えの要請があると考えます。これは妥当な要請と考えますが、市中のマスク事情を勘案し、マスク提供を義務化するのは雇用主に著しい負荷がかかります。現行の香港雇用法上では、マスクの提供義務はありませんが、上記の「職場での非常事態」に該当する場合には、提供が必要と考えます。現在香港でのマスク需要は安定していますが、多くの富裕層や慈善団体から、マスクが寄付されるケースがあります。

この機会に、就業規則をレビューし、マスク義務を明文化するべきと考えます。 例えば、検温について個人情報保護法の注意が必要です。37.5度の体温があるかいなかを確認するだけであるなら特段問題ありませんが、個々の従業員の体温データは「個人情報」となりえますので、検温状態が記帳される場合、厳密には個人情報保護法の観点から同意書が必要になります。

4.整理解雇、無給休暇、休業補償、

急激に景気が悪化するなかで、整理解雇をする雇用主も多くなっております。職金等の詳細は、こちらご覧ください。https://startuphk.jp/introductory/

雇用主から無給休暇 (Unpaid Leave)の要請がある場合があります。当然ながら、新型コロナに感染した場合には「病欠」扱いになり(この際、雇用が終了されると、雇用主は刑事罰を負います。詳細はこちらまで、https://startuphk.jp/termination/)、有給休暇が残っていれば、有給消化することになります。

整理解雇・病欠以外の場合において、雇用法上、無給休暇の扱いについて規定がないため、個々の従業員がその要請に承諾すれば、雇用法上有効になります。しかし、無給休暇を強制されその後退職になった場合には、Constructive Dismissal (退職強要)の問題が発生する可能性があります。 詳細はこちらをご覧ください。https://startuphk.jp/constructive-dismissal/

香港法上、休業補償はありませんが、緊急措置として、諸条件に充足する香港の永住居民に対して、2020年5月頃現金(香港$10,000)がFPS(Free Payment System)により支給される予定です。