2017年頃から、香港はフィンテックをはじめとする、仮想通貨(暗号通貨)業界が盛り上がってきました。2018年にはICO (Initial Coin Offering)の発行による資金調達が行われましたが、詐欺行為が横行したため、証券当局 Securities Futures Commissionが監視するようになります。その後、証券当局は、仮想通貨取引所及び仮想通貨業者(ファンド業者も含む)を規制するため、サンドボックス制度を打ち出し、規制制度を模索します。以後、毎年11月のフィンテックウィーク (Fintec Week)になると、証券当局のトップが「仮想通貨の規制をする」という内容のスピーチをしますが、仮想通貨ファンドの規制は充実しているものの、実際のところ、仮想通貨取引の規制強化には至っていません。
その背景につきまして、証券当局は、読んで字の如く「証券業」を監視・監督する行政機関になります。米国当局は、一部の中央集権型にて発行される仮想通貨(例 Ripple)が「証券」であると判断する流れはあるものの、未だ仮想通貨が証券であるかは確立されていないの現状です。そうなると、セキュリティー・トークン(ST)のように「証券」として要素がある場合を除き、「証券」ではない暗号通貨について、香港証券当局が管轄を主張することは難しくなってきます。また、中国本土において、ディジタル人民元をはじめとする中央銀行ディジタル通貨(CBOC)の導入が進められている現在、中央政府の方針に反しない為、証券当局として安易な仮想通貨関連規制を控えているようにもうかがえます。
よって、仮想通貨取引には規制がない(Unregulated)の状態が続いていますので、今後の動き 11月のフィンテックウィークを含めた当局の動向を見守りたいと思います。香港ベースのフィンテック企業は成長を続けていますので、アジアの「国際金融都市」の地位を維持するため、前向きな仮想通貨関連の規制導入を期待します。