【香港法人】 今さら聞けない香港登記書類について

香港金融機関並びに政府機関より、香港法人に係わる登記書類の提出を求められる場合があります。日本のように履歴事項全部証明書により全法人情報並びに履歴状況が一挙に確認できるシステムがないため、個々書類を使用することが多いです。

秘書役に問い合わせればわかる内容ではありますが、一般的によく使われる登記書類や名称について説明いたします。 なお、登記書類の全ては、Companies Registry (法人登記所)のオンラインデータベースより確認が可能です。 https://www.icris.cr.gov.hk/csci/  また、弁護士、公認会計士、秘書役に原本証明をお願いしなくても、こちらのHPより原本証明を手配する事が可能です。


ご不明な点がありましたら、Visence Professional Services にご相談ください。

登記書類の名前内容
NNC1会社設立時の申請書法人情報が記載(社名、登録住所、資本金、株主・取締役情報)昨年の会社法改正により、(プライバシー保護の観点から)取締役の現住所は、法人の登録住所にて代用できるようになった(株主の住所は引き続き必須)Founder創業者(設立時株主)のサイン必須取締役サイン必須(取締役が設立後15日以内に別途サインページのみ提出する事が可能)紙ベースでNNC1とAOA(後述)を提出すると、(補正に時間が掛からなければ)設立まで5営業日かかります。
NNC2社名変更するための申請書社名変更には、NNC2とは別に株主特別決議が必要社名変更が完了すると「Certificate of Change of Name」が発行
AOA定款(「Article of Association」の略)会社設立時にNNC1と伴に提出会社法で定められるモデル定款を使用するのが一般的 (参考)2014年会社法改正により「Memorandum and Articles of Association (M&A) 」が廃止されAOAに統一
CI設立証明書 (Certificate of Incorporationの略)会社名、設立日、法人番号が記載される社名変更している場合は、Certificate of Change of Nameが優先
BR事業証明書(Business registrationの略)発行機関は、Companies Registry ではなくInland Revenue Department (税務署)有効期限があり、1年か3年を選択可能(1年証書の方が割安) 法人の住所証明。法人尾ん登録住所を変更した際、BRの住所も自動的に更新されますが、事務的に更新されな場合があるため注意が必要法人名以外に、「屋号」(Business Name)を追加する事が可能
NR1法人の登録住所を変更するための届出書
NAR1年次報告書 (Annual Return) のこと。2014年会社法改正以前は、AR1と呼ばれていた。記載内容は、NNC1と同様会社情報を記載する昨年の会社法改正により、(プライバシー保護の観点から)取締役の現住所は、法人の登録住所にて代用できるようになった(株主の住所は引き続き必須)取締役か秘書役に調印権限設立後2年目より、設立記念日(Anniversary Date) から42日以内に提出 (例 2022年1月1日に設立した場合、2023年1月1日から2023年2月11日までに提出)会計監査とは関係なく提出が必要
ND2A取締役(自然人・法人)もしくは秘書役(自然人・法人)が辞任・解任・死亡、もしくは就任した場合(「事由」)の届出書 期限は、事由が発生してから15日以内就任する取締役もしくは秘書役のサインが必要 別途、事由の証跡としてレター(例 辞任届、就任承諾書)にサインしてもらうのが一般的
ND2B取締役(自然人・法人)もしくは秘書役(自然人・法人)の住所、ID番号・パスポート番号(自然人なら)等の変更に関する届出書
NSC1法人増資の届出書
NSC17/NSC19法人増資の届出書
Instrument of Transfer & Bought and Sold Notes株式譲渡証届出・登記はCompanies Registry ではなく、税務署株主情報は、次回NAR1にて更新

香港域内の電子決済Free Payment System (FPS) について

香港域内の商取引では様々な電子決済手段が活用されています。WeChat PayやAlipayの電子決済手段も浸透していますが、香港政府としては、Free Payment System (FPS)という送金手段を推奨しています。2018年9月に香港金融管理局 (Hong Kong Monetary Authority / HKMA )により方針が打ち出され、2019年頃から徐々に大手金融機関銀行にて導入されています。コロナ景気刺激策の一環として、香港政府は香港ドル10,000を香港在住の香港永久居民に配布しますが、配布にFPSが活用される予定です。

香港域内の銀行間(もしくはeWallet間)にて、 24時間365日、瞬時に、手数料無料での送金が可能になるシステムで、受取側はFPS登録もしくは指定のアプリダウンロードしておく必要がありますが、送金元は受取側の口座番号を知ることなくメールアドレスもしくは電話番号を指定することで送金が可能です。

HSBCの個人口座において、FPSをインタネット・バンキング・アプリ内で設定します。登録までの所要時間は30秒。その他、HSBCにはPayme というFPSアプリがあり、HSBC口座保持者間での送受金が可能です。 HSBCの法人口座をお持ちの方は、インタネット・バンキングよりFPSを登録することができます。小売店での支払について、Payme が活用されています。

香港域内での法人間取引には送金手数料が掛かりますので、送金手数料を抑えるため従来は小切手(Cheque)を使用ししていました。ここ数年は送金手数料無料のeCheque(受取側の口座番号・メールアドレスを特定し、PDFファイル版の小切手を受取側に送る)が使用されていましたが、今後の法人取引においてFPSの活用が期待されます。

香港の電子決済手段についてご質問がありましたら、Visence Professional Services Limited にご相談ください

香港 新型コロナ 税務最新情報(2020年4月11日現在)

納税延期措置


4月9日付け、香港税務当局(「Inland Revenue Department」 もしくは「IRD」) の発表によると、法人税及び所得税(サラリーマン)の納税通知書(Tax Demand Note)による支払い期限が2020年4月から6月となる場合、納税通知書の支払い期限は自動的に3月延長されます。

例: 納税通知書の支払期限 5月6日  →  (新)支払期限 8月6日


また、納税通知書にて分割支払を提示した場合で、4月9日以前に1回目の支払いが完了している場合、2回目の支払いは自動的に3か月延長されます。

例: 納税通知書の1回目支払期限4月6日、2回目支払期限5月6日  
   →  (新)2回目支払期限 8月6日

尚、香港から帰国前に支払う所得税、不動産に係る税金、IRD承認後の分割支払いの場合には、該当しません。

香港・オフショア 株券 Bearer Shares (無記名)株券 と Nominee 制度

現行法上、香港法人の株主はどのように証明されるのでしょうか? 

形式的・事務的に、「株券」(Share Certificate)を発行するのが慣行ですが、株券の法的意義は薄く、現行法上、株主資格を証明する書類は以下になります。

(1)Share Application(株式割当申請書)もしくは 譲渡証(既発株式の譲受)、

(2)議事録・法定帳簿(Statutory Book)

(3)登記されるNNC1(法人設立申請書) 及びNAR1(年次報告書)。

香港法上では、株券自体に意義がないため、株券譲渡は法律行為ではありません。

しかし、国によっては、株券自体を保有することに意義があり、即ち株券を無記名株券(Bearer Share)となり、株券譲渡にて株式譲渡が可能になります。所謂、オフショアといわれる国々で、無記名株券の発行が可能ですですが、近年、各国において、資金洗浄防止対策により、無記名株券の発行は認められるものの、規制が厳しくなってきました。

例えば、British Virgin Island (BVI)法人において、定款にて無記名株券を設定可能ですが、株券の保管場所が固定(Immobilized)され、当局に株式の詳細(保有者、株式数、等)を通知する必要があります。

株主の秘匿性を高めるには、ノミニー株主を活用することをお勧めします。

香港口座開設 共通報告基準 CRSについて

CRS(Common Reporting Standard もしくは 共通報告基準)は、租税回避防止を目的とし、条約により、批准国の金融機関が保有する情報を必要に応じて交換する制度で、香港・日本を含む100以上の国・地域が批准しています。2014年に宣言があり、その後各国において制定・施行されています。米国の税法である外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act もしくは 「FATCA」は、米国の納税義務のある方が、米国以外の金融機関の口座を利用して米国の税金を逃れることを防止するために制定されましたが、CRSはFATCAの国際版と認識している専門家もいます。 

金融機関に課される法律ですが、香港法人の口座開設の際、CRSに関する同意書にはサインをもとめられます。同意がない場合には口座開設はできなくなります。CRSではどのような情報が開示されるのでしょうか? 各国の合意により若干の違いはありますが、以下の情報が必要に開示されます。

  1. 口座名義、住所、納税番号、生年月日、出生地
  2. 口座番号
  3. 該当する金融機関名と銀行番号
  4. 口座残高(年次)並びに閉鎖の有無
  5. 付加価値、配当、利息等の情報(口座使途により)

共有される情報は税務関連の情報ですので、同意書にサインしたからといって、口座開設の全情報が開示されるわけではありません。また、近年個人情報保護法や銀行関連レギュレーションは厳しくなっておりますので、CRSによる情報開示は限定的と考えます。

【香港税務アップデート】研究開発は損金算入が寛大な香港で!

香港の公認会計士のケンです。今日は香港の立法府で議論されている研究開発費の実際かかった金額の3倍を損金算入できる修正税務条例をご説明します。

研究開発(R&D)は損金算入

香港では、要件を満たした研究開発費は発生年度において、全額損金算入が認められています。それに加え、より厳しい要件を満たした研究開発費については、最大で実際に要した費用の300%(3倍)を損金算入することを認める、修正税務条例が2018年5月4日から立法会(香港の立法府)で審議入りし、可決されれば2018年4月1日以降の研究開発費に遡及的に適用されます。

香港での研究開発費の損金算入

Type A Type B
損金算入額 100% 最初の200万香港ドル:300%
それ以降:200%
研究開発活動 ・自然や科学分野の知識を拡大させる活動
・科学や技術に関する新たな知識を獲得するための研究
・新しい商品、プロセスやサービスへの研究成果の適用
フィーサビリティースタディ、市場・ビジネス・マネージメントに関する分析 左記は含まれない
研究開発活動の場所 香港内外 香港内のみ
研究開発費用(社内) 資本性の支出も含めた研究開発費(Type B以外の支出) 研究開発に係る直接人件費
研究開発に係る直接消耗品費
研究開発費用(社外) 香港の適格研究団体
適格研究団体に指定されていない大学等 左記は含まれない
損金不算入項目 ・研究開発活動に関する権利獲得のための支出
・土地や建物への支出
・政府やその他から支援された研究開発費用
・研究開発費用の損金算入だけを目的とした支出

上記の表は、従来の研究開発費用をType A、新たに修正条例で追加規定された研究開発費をType Bとして、それぞれにつき損金算入額とその要件をまとめたものです。

新たに提案されたType Bは、香港内での研究開発を促進し、国際競争力を高めることを目的に、香港内で発生した研究開発に係る直接人件費・消耗品費に支出を限定することで、最大で実際に要した費用の300%(3倍)を損金算入することを認める制度になっています。

香港居住者にはお得なFX取引(金融取引)の利益に係る税金

香港公認会計士のケンです。今日は香港におけるFXの利益にかかる税金について解説します。

香港税制とFXの利益に関する税金

香港の税制の特徴は、下記の3点になります。

  • 低税率
  • 源泉地主義
  • キャピタルゲイン非課税

この特徴については以下の記事で詳しくまとめています。よければご参照ください。

https://startuphk.jp/profits-tax/

金融取引についても、上記の3点が適用されるため、金融取引が事業ではない場合はキャピタルゲインとなり非課税になります。

反対に、事業と認定されその源泉地(取引地)が香港であるとしても税率は16.5%もしくは15%ですので、低税率の恩恵を享受することができます。

居住ステータスで変わるFXの利益にかかる税金

個人と法人で、日本との関わりにより、香港でのFX取引を含めた金融取引に係る香港と日本の税金をまとめてみました。

個人:(香港居住者) 香港法人:
(日本法人との資本関係なし)
個人:(日本居住者) 香港法人:
(日本法人の子会社)
金融取引所得
例:FX、株式
香港:課税なし
日本:課税なし
(香港居住者はキャピタルゲイン非課税)
香港:課税なし
日本:課税なし
(香港法人はキャピタルゲイン非課税)
事業は非金融事業
香港:課税なし
日本:課税あり
(日本居住者は全世界課税)
香港:課税なし
日本:課税あり
(日本法人の所得と合算)事業は非金融事業を専らとし、日本のタックスヘイブン税制適用除外会社

個人・法人とも税務上日本との関わりがない場合、金融取引の利益は日本・香港とも非課税です。

FXや株式の金融取引を事業としていないため、事業でない取引から稼得される利益はキャピタルゲインとなり香港で非課税になります。ただし損失が出た場合でも繰越欠損金にはならないので留意が必要です。

また仮に、大掛かりなITシステムや会社と同様の機構を導入し、膨大な数の金融取引をシステマティックに行い事業とみなされた場合でも、日本の法人税率より低い16.5%(法人)、15%(個人事業)の税率が適用され、損失は欠損金に繰り入れられます。

一方、個人・法人とも税務上日本と関わりあるケースでは、個人の日本居住者であれば、例えば、香港の金融機関のオンライン取引を通じて利益を稼得すると、香港での取り扱いは上記の香港居住者と変わりませんが、日本で課税されます。これは個人の日本居住者(日本人のような永住者)に対して、日本は全世界課税を適用しているためです。

株式20%(所得税15%・住民税5%)の申告分離課税、FXについては総合課税で雑所得に分類され他の所得と合算され累進課税が適用されます。

一方、日本国内FXの場合でしたら20%の申告分離課税ですが、海外FXの場合は雑所得に分類され、所得に応じた税率が適用されることに留意が必要です。

日本法人の子会社である香港法人は、香港での取り扱いは上記の香港法人と変わりませんが、個人の日本居住者と同様、日本で課税されます。平成29年度の税制改正により、例え香港法人に実体があり、日本のタックスヘイブン税制適用除外を受けていても、事業とは関わりのない金融取引(FXや株式)の利益は受動的所得として、日本法人の所得と合算して法人税が課されるためです。

というわけで、個人の香港居住者はFXでもキャピタルゲイン非課税の恩恵を受けることがおわかりいただけたかと思います。もしご質問などあればお気軽にお問い合わせ下さいね!

【香港税務】ロイヤルティにかかる税金は特別扱い

こんにちは。私は香港の公認会計士として10年以上働いています。

日本法人が有する知的財産(特許権・意匠権・商標権・著作権・製造ノウハウ等)の香港での使用の対価として、香港法人から日本法人へロイヤルティを支払うことがあります。

このロイヤルティについては、受取人である日本法人の香港での事業実態により、ロイヤルティ額の16.5%もしくは4.95%が日本法人に課され、香港法人が日本法人の代わりに納付します。

香港におけるロイヤルティ収入の取り扱い

ロイヤルティとは特定の権利を利用する利用者が、権利を持つ者に支払う対価のことで、特定の権利には特許権意匠権商標権著作権製造ノウハウ等の知的財産権が含まれます。

一方、香港の税金は所得に対し源泉地主義が採用されており、香港源泉の所得のみ香港で課税されますので、香港で事業を行っていない日本法人が保有する知的財産から生じるロイヤルティ収入は、その源泉が香港外(日本)にあるため、厳密には香港では課税されないことになりますが、Section15(1)(a), (b)及び(ba)により所得と規定することで課税を行っています

源泉地主義については以下も読んでみてください!

https://startuphk.jp/profits-tax/

通常、非居住者である日本法人が香港の使用者から受け取るロイヤルティは、そのうちの30%を所得とみなし、30% × 16.5%(2017/18) = 4.95%が受取額に対し課税されます。

しかし、株式の過半数保有による支配関係や同一の者に支配されている会社同士というような関連当事者間のロイヤルティに関しては、過去において香港内で対象無形資産の全部または一部を保有していた場合、受取ロイヤルティの全額(100%)がみなし所得とされます。

この場合、受取人が法人であれば100%×16.5%=16.5%が受取金額に課税されます。これは、香港で生成した無形資産をタックスヘイブンで設立された関連法人に譲渡し、みなし所得を30%とする租税回避行為を防止するためです。

またこのみなし所得30%の措置は、非居住者のみに適用されれるため、仮に日本法人が香港にPermanent Establishment(関連記事:日本・香港PE)を有し事業を行っている場合は香港源泉所得をみなされ、受取ロイヤルティの全額(100%)がみなし所得となるので留意が必要です。

日本・香港のPermanent Establishment(PE)は以下で説明しています。

https://startuphk.jp/pe-hkjp/

香港法人から日本法人支払われるロイヤルティの課税

日本法人が香港にPEを有さない場合は、現実的には税金の徴収が難しいため、香港法人がロイヤルティの支払の際に税額相当分を留保し、受取人である日本法人に代わり納税する形で、ロイヤルティの支払者(香港法人)に対して納税義務を課しています。

具体的には香港法人の事業所得税の申告に併せ、日本法人のみなし課税所得をIRDに申告します。IRDはその申告に基づき、香港法人に対し日本法人のための申告書を発行し、香港法人が申告書を提出した後、IRDが賦課通知書を発行し、最終的に香港法人が支払留保分を納付します。

日本・香港租税条約に基づくロイヤルティの制限税率

みなし所得 香港租税条例 日本・香港租税条約
100% 16.5% 5%
30% 4.95% 4.95%

日本・香港間では租税条約が締結されているため、香港租税条例より租税条約が優先して適用されますが、香港租税条例が租税条約の税率より低い場合、香港租税条例が適用されます。

日本法人は、受取ロイヤルティを課税所得に算入し、日本で法人税を申告・納付することになるため、 香港でのロイヤルティ税との二重課税が生じます。その二重課税を回避するためには、日本法人の法人税申告に際し、外国税額控除を申請します。ただし香港の国内法の税率によって課税を受け、租税条約の限度税率を超える部分には、外国税額控除の適用は認められません(法人税法施行令142の2⑧五)。

最後の方、少し複雑になりましたが理解いただけましたか?なにかご質問などあれば、お気軽にご質問下さいね。

【香港税務】従業員の給与所得の申告に関し雇用主が果たすべき義務とは

こんにちは。私は香港公認会計士です。

香港の給与所得税は香港源泉の個人の給与に課税される税金になり、その税金申告には、個人のもさることながら、個人を雇用する雇用主にも支払給与に関する申告義務があることに留意が必要です。今日は雇用主の申告義務について解説します。見逃しがちな分野ですが、しっかりチェックしてくださいね!

なお、個人の申告義務につきましては、(関連記事:給与所得税)を参照下さい。

https://startuphk.jp/salaries-tax/

香港の給与所得にかかる雇用主義務とは

ずばり、これが社員の給与所得にかかわる雇用主義務一覧となります。

租税条例 義務 罰則
Section 52(2) Employer’s returnの期日までの提出
Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(4) IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者の通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(5) IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月前に文書での雇用契約終了の通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(6)
1ヵ月以上香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(7) Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月間給与の支払留保 Level 3罰金及び裁判所命令

ではそれぞれ「義務」内容を確認していきましょう。

Employer’s returnの期日までの提出

給与所得税上の課税年度(つまり4月1日から翌年3月31日)の各役員・従業員への支払給与・賞与・会社負担住宅費・税金及び年金払込額等につき、雇用主はIRDの発行する申告用紙の発行日から1ヵ月以内にIRDに提出する必要があります。IRDはこの雇用主からの申告書と従業員個人からの申告書を併せて精査するので、申告内容の整合性に留意が必要です。
(申告用紙:BIR56A及びIR56B)

IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者通知

雇用主が、新規に役員・従業員を香港で雇用を開始し、かつ給与所得税の課税対象があると見込まれる場合、雇用開始後3ヵ月以内に、その個人の氏名・住所・雇用開始日及び雇用条件をIRDに通知する必要があります。一方、新規に雇用された役員・従業員が専ら香港外で役務を提供し給与所得税が課されないと見込まれる場合は、通知は必要ありません。
(申告用紙: IR56E)

IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月超前に文書での雇用契約終了の通知

退職を予定する役員・従業員の雇用最終日から1ヵ月前までに、氏名・住所・雇用終了日等を通知する必要があります。
(申告用紙: IR56F)

一か月を超えて香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知

Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月給与の支払留保
海外出張を除き、役員・従業員が1ヵ月以上香港から出国を予定している場合、出国予定日の1ヵ月前までに通知する必要があります。また当該役員・従業員が給与所得税の未納がある場合は、IRDの発行するいわゆるクリアランスレターがない限り、雇用主は通知書の提出から1ヵ月間の給与支払を留保しなければなりません。
(申告用紙: IR56G)

租税条例の罰金

罰金 Level
HK$1~HK$2,000 Level 1
HK$2,001~HK$5,000 Level 2
HK$5,001~HK$10,000 Level 3
HK$10,001~HK$25,000 Level 4
HK$25,001~HK$50,000 Level 5
HK$50,001~HK$100,000 Level 6

上表は租税条例が定める、レベル毎の罰金額になります。

給与所得に係る雇用主義務違反に対する、罰金はLevel 3となっておりますが、実務上はよほどひどい違反でない限りは、厳格には執行されていない印象です。

以上となります。給与所得というと、社員のことばかり考えがちですが、雇用主が申告しなくてはいけない義務があることがわかりましたでしょうか。なにかわからないことがあれば、お気軽にご相談下さい