香港 アセットマネージメント事業に係わる規制について (その2)

アセットマネージメント関連のライセンス

それでは、ファンド販売にはどのようなライセンスが必要なのでしょうか?また、アセットマネージメントのライセンス(Type 9) では販売行為はできるのでしょうか?

ファンドを含む「証券」の販売、取次、決済をする場合には、Type 1 (Dealing in Securities)というライセンスが必要です(証券ライセンス)。よって、上場・私募ファンドを問わず、販売するのであれば、Type 1が必要になります。

また、ファンドを含む「証券」のアドバイスをする(投資顧問業)には、Type 4 (Advising on Securities)のライセンスが必要になります。

ファンド組成、一任運用、自社ファンド・アドバイスをするには、前述のType 9が必要です。

ここで、注意が必要なのは、SFCライセンス取得時は、以下の条件を付記されることが殆どです。

  • 顧客資産の管理は不可。よって、Custodian との契約が必要です。
  • 顧客は、適格機関投資家のみ

    香港証券先物法上の「適格機関投資家」とは
    800万HKD(同種ポートフォリオ)/ 4000万HKD(総資産)

ライセンス控除
香港証券先物法、幾つかの控除が認められています。即ち、ライセンスをもたなくとも一定の活動は認められています。
 
A) 前述の通り、Type 9 ライセンスは、REIT、証券・先物契約のアセットマネージメント業務はType 9が必要ですが、付帯控除(Incidental Exemption)にて、Type 9を保持する会社が、既に扱っているファンドの販売行為(Type 1行為) やアドバイス・投資顧問(Type 4行為)をする事は認めれています。限定的ですが、Type 1 もしくはType 4ライセンスを保持しなくとも、既に管理しているファンドの付帯的・派生的な業務として、営業・販売・アドバイスすることが可能です。
 
B) 機関投資家(Dealing with Professional Investors Exemption)。言い換えれば、機関投資家は、自身により投資判断を行うため、ライセンスをもった資産運用会社のライセンス必要ありません。

C) 完全親会社・子会社の資産運用業 (Group Company Exemption) 。100%株式を保持する親会社もしくは子会社の証券を資産運用することは可能です。自己取引・自己投資(Proprietary Trading)にはライセンスを必要としません。100%の資本関係がある関連会社のみとの取引でしたら、不特定多数の投資家にサービスを提供するものではなく(則ち「業」とみなされないため)当該業務はライセンスを必要としません。

D) 信託法人受託者による資産運用(Trust Company Exemption)
投資家が信託会社に拠出し、TCSP (Trust and Company Service License) ライセンス保持の会社が受託者(Trustee) となり、Type 1(証券販売)、 Type 4(アドバイス・投資顧問)、Type 9(資産運用)することが認めれています。 
SFCライセンス取得に注意点と必要要件
 
A) 期間は8カ月ほど
B) Responsible Officer (RO) 2名を雇用
   => 現RO保持者の雇用を推薦
=>  1名、(相場)年収150万HKDくらい
C) ビジネスプラン・マニュアル作
D) Manager in Charge (MIC) の選任
E) 内部統制の構築する必要があります。
F) オフィススペース
  => オフィスレイアウトを提出します

香港 アセットマネージメント事業に係わる規制について (その1)

香港は世界有数の国際金融機関が拠点をおき、ファミリーオフィスやウェルスマネージメントビジネスを始めやすい国際金融都市として知られます。

しかし、ファンドなどのアセットマネージメント事業を行うには、関連規制を理解する必要があります。本書では、どのような場合ライセンスが必要となるのか、また一般的に使用されるファンドストラクチャーについてご説明いたします。

「証券」(Securities)とは

まず、出発点として、扱う商品により規制が異なるため、関連規制について整理します。


Securities and Futures Ordinance(「香港証券先物法」香港法第571章)Schedule 5、Part 2にて、「Asset Management (Type 9)」(資産運用業)の定義は以下の通りです。

  • 「不動産投資スキームに係わる資産運用」(所謂Collective Investment Scheme もしくREIT)或るは
  •  「証券・先物契約に係わる資産運用」

上記(a)もしくは(b)に該当する場合、Securities and Futures Commission  (「SFC」繁体字名 證券及期貨事務監察委員會)よりType 9というライセンスを取得する必要があります。

それでは、「証券」とはなんでしょうか? 香港証券先物法Schedule 1、Part 1において「Securities」は、(要約すると)上場・非上場問わず法人・組合 (Partnership /Limited Partnership)の株式、債券(Debenture) と定義しています。後述の通り、ファンド持分は株式もしくは組合持分になります。

では、暗号通貨は証券に該当するのでしょうか? もし、暗号通貨が証券に該当するのであれば、暗号通貨のアセットマネージメント事業はType 9ライセンスを取得する必要があるのでしょうか? 

現在のところ、香港並びにシンガポールを含む英国法(Commonwealth)圏にて、「証券」法理を説明する有力な判例がないため、米国の判例Howey( 328 U.S. 293 (1946))を基礎として、「Investment Contract(投資契約)」であるのかを分析するのが一般的です(Howey Test)。 米国では、Howey Testに基づき、米国SECから見解や訴訟にて、中央集権型(Centralized)の暗号通貨 もしくはセキュリティートークン(Security Token)は、「証券」と位置付けるのが定説となっています。また、米国以外の国々では、セキュリティートークンは間違いなく、証券となります。従いまして、セキュリティートークン以外は、証券に非該当なため、暗号通貨を扱うアセットマネージメント事業はSFCの管轄下にありません(SFCには監督する権限はありません)。言い換えれば、もし、暗号通貨事業にてSFC Type 9を取得することを希望されるのであれば、最低限1つのセキュリティートークンに関連するプロダクトもしくはファンドを組みこむ必要があります。

ファンドの募集・私募

それでは、組成されたファンドの販売方法と販売に関する規制についてご説明いたします。

組成されてファンドは証券に該当するため、不特定多数の投資家に販売(募集もしくはPublic Offering)するには、ファンドを上場する必要があります。上場するのは香港でなくても、どの国の取引所でも構いません。(非上場の不動産投資スキームの場合は、SFC登録)。

しかし、例外として、私募(Private Offering)があります。私募には明確なルールはないため慣例として、広告を禁止したり、免責条項を付記したり様々なコンプライアンスルールを順守する必要があります。そのルールを厳守しつつ、販売行為が適格機関投資家のみもしくは50人の投資家(1投資家500万香港ドル以内)に限定された場合、(上場してなくても)ファンドを香港投資家に対して販売することが可能です。上場には膨大な費用と時間がかかりますので、私募を活用することで効率的に資金調達することが可能です。

【要約】

【香港法人】 今さら聞けない香港登記書類について

香港金融機関並びに政府機関より、香港法人に係わる登記書類の提出を求められる場合があります。日本のように履歴事項全部証明書により全法人情報並びに履歴状況が一挙に確認できるシステムがないため、個々書類を使用することが多いです。

秘書役に問い合わせればわかる内容ではありますが、一般的によく使われる登記書類や名称について説明いたします。 なお、登記書類の全ては、Companies Registry (法人登記所)のオンラインデータベースより確認が可能です。 https://www.icris.cr.gov.hk/csci/  また、弁護士、公認会計士、秘書役に原本証明をお願いしなくても、こちらのHPより原本証明を手配する事が可能です。


ご不明な点がありましたら、Visence Professional Services にご相談ください。

登記書類の名前内容
NNC1会社設立時の申請書法人情報が記載(社名、登録住所、資本金、株主・取締役情報)昨年の会社法改正により、(プライバシー保護の観点から)取締役の現住所は、法人の登録住所にて代用できるようになった(株主の住所は引き続き必須)Founder創業者(設立時株主)のサイン必須取締役サイン必須(取締役が設立後15日以内に別途サインページのみ提出する事が可能)紙ベースでNNC1とAOA(後述)を提出すると、(補正に時間が掛からなければ)設立まで5営業日かかります。
NNC2社名変更するための申請書社名変更には、NNC2とは別に株主特別決議が必要社名変更が完了すると「Certificate of Change of Name」が発行
AOA定款(「Article of Association」の略)会社設立時にNNC1と伴に提出会社法で定められるモデル定款を使用するのが一般的 (参考)2014年会社法改正により「Memorandum and Articles of Association (M&A) 」が廃止されAOAに統一
CI設立証明書 (Certificate of Incorporationの略)会社名、設立日、法人番号が記載される社名変更している場合は、Certificate of Change of Nameが優先
BR事業証明書(Business registrationの略)発行機関は、Companies Registry ではなくInland Revenue Department (税務署)有効期限があり、1年か3年を選択可能(1年証書の方が割安) 法人の住所証明。法人尾ん登録住所を変更した際、BRの住所も自動的に更新されますが、事務的に更新されな場合があるため注意が必要法人名以外に、「屋号」(Business Name)を追加する事が可能
NR1法人の登録住所を変更するための届出書
NAR1年次報告書 (Annual Return) のこと。2014年会社法改正以前は、AR1と呼ばれていた。記載内容は、NNC1と同様会社情報を記載する昨年の会社法改正により、(プライバシー保護の観点から)取締役の現住所は、法人の登録住所にて代用できるようになった(株主の住所は引き続き必須)取締役か秘書役に調印権限設立後2年目より、設立記念日(Anniversary Date) から42日以内に提出 (例 2022年1月1日に設立した場合、2023年1月1日から2023年2月11日までに提出)会計監査とは関係なく提出が必要
ND2A取締役(自然人・法人)もしくは秘書役(自然人・法人)が辞任・解任・死亡、もしくは就任した場合(「事由」)の届出書 期限は、事由が発生してから15日以内就任する取締役もしくは秘書役のサインが必要 別途、事由の証跡としてレター(例 辞任届、就任承諾書)にサインしてもらうのが一般的
ND2B取締役(自然人・法人)もしくは秘書役(自然人・法人)の住所、ID番号・パスポート番号(自然人なら)等の変更に関する届出書
NSC1法人増資の届出書
NSC17/NSC19法人増資の届出書
Instrument of Transfer & Bought and Sold Notes株式譲渡証届出・登記はCompanies Registry ではなく、税務署株主情報は、次回NAR1にて更新

海外使用の翻訳証明 (Certified Translation)とは

法的目的において、翻訳文書を提出する際、翻訳証明もしくは翻訳認証を求められる場合があります。 たとえば海外の外国領事館でビザを申請する場合や、海外政府機関に文書を提出する場合など、認定された翻訳の提供を求められることがよくあります。

例として、出生証明書、結婚証明書、離婚証明書、医療記録が含まれます。また、銀行口座やその他の銀行業務の申請には、多くの場合、認定された翻訳が必要です。

経験則上、政府の省庁は、認証要件に関してかなり一貫性がありません。翻訳が拒否されないようにするには、翻訳を提出する政府機関または機関に、その要件が正確に何であるかを尋ねることが重要です。

翻訳証明には、以下2種類があります。

  • 会社証明書(Company Translation)は、レターヘッドに印刷された正確さの証明書であり、会社の代表者が署名・印鑑が押印されます。この証明書は、翻訳のプリントアウトに添付されています。
  • 宣誓申告(Sworn Declaration) は、公証人に直接出向き、そこで翻訳を提示し、それが真実で正確であることを宣誓します。

Visence Professional Services では、Company Certification とSworn Declaration を提供しています。日語、英語、中国語での対応が可能です。様々な、海外使用翻訳の実績がございます。お気軽にお問い合わせください。

【香港活用方法】中国投資・進出について(2022年2月18日現在)

最近、海外事業を展開するビジネスマンから「米中対立が収束した後、中国経済圏はどのようになるか」という照会があります。国際政治情勢は欧州・アジアにて激化し、不確実性が高まっていますが、いつか収束するはずです。本稿では、地政学的リスクが収まることを前提に、事実に基づき、中国経済圏の展望について冷静に分析し、国際金融都市「香港」の活用方法とリスク回避方法についてご紹介いたします。

以下が中華圏・香港の状況です。

  • 中国経済圏は(国土が広くGDPの元データの質について諸説ありますが)世界第2位の経済圏で、現在鈍化傾向であるものの成長を続けています。
  • 不動産バブルが崩壊しましたが、主要都市の経済は成熟し、中国中央政府は「共同富裕」(Common Prosperity) による貧困層への資産分配(Wealth Distribution)を打ち出しました。
  • 米国シリコンバレーを見本に、深圳はAIやIOT分野のハブとなり投資活動が盛んになりました。欧米企業や日本企業がなかなか入り込めないのが現状です。
  • 政治制度について、時の政権により左右されますが、中国は「社会主義」に基づくため、欧米諸国や日本の「民主主義」制度とは異なります。台湾関係を含め、欧米諸国・日本との外交的な衝突は絶えません。

    香港について
  • 2014年頃より民主化デモがスタートし、2019年秋には激化しました。当局はデモ活動は外国勢力に影響されていると考え、外国勢力を排除するための「国家安全法」が施行されました。その後、扇動行為や国家反逆罪の取締が強化され、コロナ・オミクロン蔓延にも後押しされ、デモ活動は沈静化しました。
  • 英国との共同宣言(Joint Declaration)に基づく一国二制度は2047年に終了しますが、中央政府は以後の香港の在り方について一定の影響を与えています。英国より返還された1997年頃と同様に、多くの香港人が、北米、英国、欧州、日本、台湾などに移住しています。
  • Google 等の欧米企業や日本企業は、香港撤退・縮小を検討しますが、国際金融機関の香港拠点はアジアでの投資活動を支えています。他方、香港域内のデータセンターに対する投資は以前より増加傾向にあります。

上記事実に基づき、中立的なコメントをいたします。

メディア・ソーシャルメディアにより影響された感情論は、中国投資を避ける傾向にあるなか、対中投資の在り方(一部撤退、リスク回避手段等)を見直す必要がありますが、海外展開するビジネスが世界第二位の経済圏に(完全に)背を向けるのは、正しいビジネス判断であるのか著者は疑問を感じています。 

香港の隣町である深圳は、シリコンバレーや日本の技術力に大きく影響され、AI・IOTのハブとして成長しましたが、発展経緯、技術革新のスピードは、現地独特の商慣行や人材が寄与しています。中国グレイターベイエリア(China Greater Bay Area) 構想の、動向には今後注視していきたいです。https://www.bayarea.gov.hk/en/home/index.html

「国家安全法」は社会主義国的方針により運用されていますが、「扇動罪」、「国家反逆在」は諸外国の法律とそれほどかわりませんし、香港司法制度の独立性に影響は確認できません。しかしながら、諸外国は国家安全法の運用方法について良く捉えていないため、外交的かつ丁寧に説明し、両者が理解する努力が必要と考えます。同時に、中国大陸の歴史は外国勢力の侵略・影響によって大きく左右されたことから、政治判断やセンティメントに歴史観が影響することは注意すべき点です。

香港人の移住ブーム、一部国際企業の香港撤退は、1997年前(香港中国返還時)の光景と酷似します。しかし、移民ブームを経て、2003年SAR後、香港は中国のゲートウェイとして脚光を集め経済は急回復しました。香港経済にサイクルがあると仮定すると、幾何学的に2019年が経済縮小のどん底であり、そこから成長するかもしれません。コロナ並びに政治情勢が安定すれば、また人材が集まり発展する国際都市となる可能性はあります。

地政学的不安をチャンスと捉える方もいます。米国著名投資家でBridge Water Associates創設者である Ray Dalio氏 は、アリババに追加投資をしています。Dalio氏は親中派として知られますが、現況を機会としてして捉え中国事業家に恩を売る良いタイミングかもしれません。https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-25/dalio-says-u-s-divisions-pose-risk-for-2024-election-upheaval

中国経済が継続して成長することを想定すると、現段階で中国経済から完全撤退してしまうと、地政学的リスクが改善された際、ビジネス機会を逃す事になってしまいます。一方、地政学的リスクは、投資家やビジネスマンのコントロール下には無いため、代替案(Plan B)は必須です。

引き続き、ゲートウェイであり法人税の低い「香港」を活用するのが合理的ですが、監査義務のないオフショア法人(例 英国バージン諸島、ケイマン諸島、セイシェル)を香港にて「外国法人」登録することで、香港域内の口座開設が容易となります。香港が政治的に影響をうけることに備え、第三国の銀行口座に一定資金をプールしておくことでリスク回避が可能です。

地政学的問題が一日も早く解消されることを願います。香港法人・オフショア法人に関して、Visence Professional Services (https://visence.info/)にご相談ください。



香港法人税の納税について

まず、香港法人に係る税務についてご説明します。

年間売上高がHK$2,000,000 (28,000,000円)以上の場合、16.5%。

年間売上高がHK$2,000,000以下の場合、8.25%。

国際金融都市では最低水準です。

また、上記税制は、香港域内で事業を行った場合です。香港域外、則ち、オフショア控除申請を活用すると、一部もしくは全部が法人税の対象外となります。

監査義務

全ての香港法人 (Limited Company)は、ライセンスを持ったCPAより毎年会計監査を受けないといけません。(無限責任会社、合名会社 、個人事業主の方は、その必要はありません)。しかし、新設会社には例外適用され、設立後18カ月以内に、監査を完了し納税すれば、問題ありません。

納税申告書 (Profits Tax Return)

香港法人は毎年納税申告をする必要があります。納税申告書(Profits Tax) は、毎年決済時期になると送られてきます。提出期限は、発行後原則1カ月なのですが、会計時期により提出期限がかわります。

2020年4月1日から2020年11月30日の期間に決済日がある場合、「Code N」
2020年12月1日から2020年12月31日の期間に決算日がある場合、「Code D」
2021年1月1日から2021年3月末31日の期間に決算日がある場合、「Code M」

Code毎の提出期限は以下です

Code N:                                                        2021年6月15日まで

Code D:                                                        2021年8月30日まで

Code M(利益がでている場合)  2022年1月31日まで

言うまでもなく、決済時期は自由に変更できます。

以下が、Tax Return のサンプルです。

Image Right

年間売上高が2,000,000以下の場合、当該法人が税務申告書を提出する場合、監査報告書を添付しなくても良いです。

香港法人が投資をする場合の税務の扱い

香港法人が投資をする場合、特定の要件を満たせば、投資で得た収益について税務がかかりません。Inland Revenue Department税務局は、ビジネス自体が投資事業で無い事、投資が長期的な行われていること、投資収益が香港外にあること、等様々な要素を判断します。投資収益が税務対象になるか否かは、まず監査役が判断することになります。

香港規制 最新版 仮想通貨規制・ディジタル人民元 2021年夏

2017年頃から、香港はフィンテックをはじめとする、仮想通貨(暗号通貨)業界が盛り上がってきました。2018年にはICO (Initial Coin Offering)の発行による資金調達が行われましたが、詐欺行為が横行したため、証券当局 Securities Futures Commissionが監視するようになります。その後、証券当局は、仮想通貨取引所及び仮想通貨業者(ファンド業者も含む)を規制するため、サンドボックス制度を打ち出し、規制制度を模索します。以後、毎年11月のフィンテックウィーク (Fintec Week)になると、証券当局のトップが「仮想通貨の規制をする」という内容のスピーチをしますが、仮想通貨ファンドの規制は充実しているものの、実際のところ、仮想通貨取引の規制強化には至っていません。 

その背景につきまして、証券当局は、読んで字の如く「証券業」を監視・監督する行政機関になります。米国当局は、一部の中央集権型にて発行される仮想通貨(例 Ripple)が「証券」であると判断する流れはあるものの、未だ仮想通貨が証券であるかは確立されていないの現状です。そうなると、セキュリティー・トークン(ST)のように「証券」として要素がある場合を除き、「証券」ではない暗号通貨について、香港証券当局が管轄を主張することは難しくなってきます。また、中国本土において、ディジタル人民元をはじめとする中央銀行ディジタル通貨(CBOC)の導入が進められている現在、中央政府の方針に反しない為、証券当局として安易な仮想通貨関連規制を控えているようにもうかがえます。

よって、仮想通貨取引には規制がない(Unregulated)の状態が続いていますので、今後の動き 11月のフィンテックウィークを含めた当局の動向を見守りたいと思います。香港ベースのフィンテック企業は成長を続けていますので、アジアの「国際金融都市」の地位を維持するため、前向きな仮想通貨関連の規制導入を期待します。

香港法人 カンパニーチョップ

香港法人にて使用されるカンパニーチョップ (Company Chop)(印鑑)についてご説明します。

実際に使用されているカンパニーチョップ

呼び方は色々ありますが、英語では1を「Round Chop」、2を 「Square Chop」、3を「Common Seal」と呼んでいます。

法定要件の整理

まず、香港会社法 Company Ordinanceにて、Round Chop 並びにSquare Chopは要件とされていませんので、Common Sealは、2014年会社法改正において、法人として採用することを選択できるようになりました。しかし、香港の商習慣として必要とされますので、結局必要とされます。

尚、日本の印鑑証明書の制度がないので、取締役役会にて、印鑑を会社であることを承認する必要があります。通常は、法人設立時のFirst Board Resolutionにて承認します。

用途

それでは、どのような場合に使うのでしょうか。

Round Chopは、主に認め印で、配達があった場合に押印したりします。また、政府機関に提出する際に押印を求められる場合があります。請求書や領収書に押印する企業もありますが、これは法的要件ではありません。

Square Chopに刻印されている文字をみると、

For and on behalf of Visence Professional Services Limited (法人名)

   「 —————————————————————————-

                                                     Authorized Signator(ies) 
              (サイン権限者)

                         」

と書いてあります。

法人のサイン権限者でかたが点線(—–)の上にサインします。よって、Square Chopは契約書などに使われる事が多いです。しかし、前述の通り、法的要件ではなく香港商習慣にて必要とされるため、契約相手からSquare Chopの押印を求められた場合に、押印します。尚、香港会社法上は、「For and on behalf of (法人名)」と書いて、サインすれば、当該法人の代表者がサインしていることになり、法人として契約が締結できてしまいますので、注意が必要です。

  • Common Sealは、Deedという特殊な権利書を発行する場合に必要です。鉄製の道具の内部に会社名が刻印されていて、金色・赤色のシールと紙を締め付けることで、印字されます。Deedを発行することで、契約当事者での権利だけでなく、随伴性を維持することが可能になります(別の機会に説明いたします)

調達先

法人設立時に、印刷屋さんにグリーンボックスを作成してもらいますが、グリーンボックスの中に入っています。別途、必要でしたら、上環のMa Wah Lane にて購入できます。

銀行や金融機関

法人によっては、銀行取引において、セキュリティー上の観点から、カンパニーチョップ(Square Chop)とサインを登録し、2つの要件がないと入出金できないようにする場合があります。しかし、登録をしていなければ、カンパニーチョップは銀行取引で必要としません。しかし、金融取引でも年金(MPF)関連の届出書には、カンパニーチョップが必要とされますのでご注意ください。

カンパニーチョップについてご不明な点がありましたら、弊社までお問い合わせください。