私は香港弁護士として働いています。昨今はオフショア会社に関する問合せが多くあります。今回はオフショア会社に関してご説明します。
オフショア法人ってなんだろう?
オフショア会社が今、何時になく世界中で注目を浴びています。「オフショア会社」の定義は諸説ありますが、一般的に、会社設立・運営において以下の要素を提供可能な管轄・国・州(以下、「国」)を指します。オフショア諸国の共通点として産業として金融業に特化し、実質的ビジネスが行われる国内市場(「オンショア」)とは別の国になります(「オフショア」=沖合・海外)。
- 低税率・非課税(詳しくは税務専門家にお問い合わせください。)
- 容易・低コストの会社設立・維持が可能
- 株主・取締役の最低人数1名、且つプライバシーを保護する
- 住所貸与及びノミニー・エージェントの代理により、株主・取締役はオンショアに在住
オフショア法人をオフショアってどんな国々?
著者は、香港の会社設立(Company Service) の専門家であるものの、経験上、良く活用されるオフショア諸国の比較表を以下まとめます。
地域 | 法体系 | 法人税率 (%) | 取締役 最低数 (居住義務) |
株主 最低数 |
取締役・株主 開示義務 |
最低 資本金 | 監査 | 年次報告書 | |
BVI* | カリブ | 英米 | x | 1(x) | 1 | x | US$1 | x | x |
セイシェル | インド洋 | 英米 | x | 1(x) | 1 | x | US$1 | x | x |
サモア | 南太平洋 | 英米 | x | 1(x) | 1 | x | US$1 | x | x |
パナマ非居住者 | 中南米 | 英米 | x | 1(x) | 1 | x | US$1 | x | x |
ルクセンブルク | 欧州 | 大陸 | 12.5 | 1(x) | 1 | x | CHF50,000 | x | ✓ |
シンガポール | アジア | 英米 | 非居住者 x | 1 (✓) | 1 | ✓ | SG$1 | x | ✓ |
香港 | アジア | 英米 | 非居住者 x | 1(x) | 1 | ✓ | HK$1 | ✓ | ✓ |
脚注:BVI=British Virgin Island, 「x」は該当・義務なし、「✓」は該当・義務あり。 法体系は英米法系 (Common Law) 若しくは大陸法系(仏・独・日本)。 シンガポール・香港の法人税はそれぞれ最高 17%・16.5%(優遇措置有)ですが、オフショア目的は非課税。 |
そもそもオフショアで会社設立するのは合法なの?
「パナマ文書」事件にて、オフショア会社が脚光を浴びましたが、一般的に、オフショア会社設立は合法で、汎用性は様々ですが、伝統的に投資・運用の目的で使用されます。
ご参考までに、香港証券株式所に上場しているオフショア会社が多数ありますので、主な金融都市にて認められている会社形態といえます。
オフショア諸国は税率が低いため、経由するだけで節税効果がありますので、「租税回避行為」との見解があるようですが、それは見立ての問題であると著者は考えます。
香港はオフショアで、オフショア法人設立は可能?
それでは、香港はオフショアなのでしょうか。前述の4項目を照らし合わせますと、
1.低税率・非課税について、居住者は非課税で、居住者について16.5%です(優遇措置により低減な税率は可能です)。
2.会社設立はほぼ1週間で完了し、最低資本金がHK$1で、設立・維持費用を抑制できます。
3.株主と取締役の最低人数はそれぞれ1名ですが、株主・取締役の個人情報が開示される法律です。また、後述のノミニーを活用した場合でも株主・取締役の個人情報を開示する必要があります。
4.ノミニー・エージェントの代理により、株主・取締役はオンショアに在住することは可能ですが、2018年3月施行のSignificant Controllers Registry 法制により、会社として登録住所にて、株主、実質的支配者(Significant Controller)、取締役、会社秘書の台帳を保管する義務が課されました。よって、バーチャルオフィスによる住所貸与のサービス(上記台帳の保管なし)が違法になりましたので、注意が必要です。
オフショア法人に関するご質問・不明点などあれば、お問い合わせからご連絡ください。
著者
小原 淳(Jun Obara)
Managing Partner, Visence Professional Services Limited
enquiry@visence-japan.com
1978年静岡県三島市に生まれ、14歳で渡米。以後中学から大学院卒業まで米国で過ごす。Juris Doctor (法職博士号)と米国NY州弁護士資格を保持。
2007年日本に帰国後は、外資系証券会社及び日系銀行にて、コンプライアンスオフィサー・社内弁護士として金融法務及びストラクチャードファイナンス業務を経験する。
2012年に香港に移住後は、国際法律事務所において、日本企業の企業買収を含む、香港・中国・アジア諸国進出に関する助言や証券・投資顧問会社設立のサポートに携わる。 紛争解決の分野においても、欧州自動車メーカー及び関連日本子会社が関与する日本・アジア地区に て発生した製造物責任・リコール問題の紛争解決において尽力し、また日本企業が関与する米国訴訟・調査・捜査におけるeDiscovery対応の経験もある。
2017年、ビジネスの多様性に柔軟に対応するためコンサルティング会社Visence Professional Services Limitedを設立し、法律知識を活かし、香港富裕層の対日イ ンバウンド投資の総合ビジネスサポートをする傍ら (http://www.visence-japan.com/)、日系企業の香港・中国・アジア進出のサポートにも全力を注いでいる。
米国NY州弁護士、香港弁護士 (not practicing)
Juris Doctor
日証協外務員・内部管理責任者資格
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