私は香港の公認会計士として、企業に10年以上税務アドバイザーを提供しています。香港で税務を考える上で論点になるPermanent Establishment(恒久的施設)の問題があります。今日はこのPermanent Establishment(PE)について考えます。
Permanent Establishmentの概要
Permanent Establishment(PE)とは恒久的施設を指し、日本・香港租税条約上では、OECDモデル租税条約に従い、「事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と定義されています。
このPEを有する日本法人はそのPEの形態に関わらず、実質的に香港で事業を行っているとみなされ、香港PEに帰属する所得につき、香港で事業所得税が課されます。つまり香港に法人を有していないものの、実質、法人と同機能を果たして事業を行っているとみなされ、香港源泉の所得に対し、事業所得税が課されることになります。
これだけではよく分からないという方が多いと思われますので、これを日本・香港租税協定に基づいて分類してみると、次の3つに分けられます。
- 固定事業所PE
事業の管理の場所(支店、事務所、工場等) - 建設工事PE
12ヵ月超の期間存続する工事現場 - 代理人PE
企業を代理して行動し当該企業の名において契約を締結する権限を常習的に行使する者
例えば、日本法人が香港に支店や事務所を有し、事業活動を行っている場合は、その日本法人は香港にPEを有しているとみなされ、例え香港法人でなくても、香港源泉の所得につき事業所得税が課されます。
具体例で説明しましょう。日本で高級バイクを売っている会社があるとします。彼は香港の富裕層相手にも高級バイクを売ろうと思い、香港のシェアオフィスを拠点に、バイクを売り、売上を立てます。お金は日本の銀行口座に振り込んでもらうことにしました。この場合、香港にPEを有しているとみなされ、課税されます。実際にはシェアオフィス宛に、課税通知が届くことになります。(ちなみに、こういったケースではビザなしでの商行為が問題になることもあります。ただ、税務局は香港源泉なのか否か、もしくはインカムゲインなのかキャピタルゲインなのかのみを評価します。)
代理人PEについては留意が必要です。日本法人が香港で代理人を任命し、香港で営業活動を行う場合、当該代理人が、日本法人の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使し、企業に代わって営業活動を行う場合、香港代理人は日本法人のPEとみなされ、その事業所得に対し税金が課されます。
しかし、通常の方法で業務を行なう仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人(独立代理人といいます)を通じて事業活動を行なっている場合には、PEとはなりません。あくまで日本法人が実態として香港で事業を行っているか否かが論点になります。
一方、下記のような準備的・補助的な事業についてはPEには該当しないこととしています。
- 法人に属する物品または商品の保管、展示または引渡しのためにのみ施設を利用すること。
- 法人に属する物品または商品の在庫を、保管、展示または引渡しのためにのみ保有すること。
- 法人に属する物品または商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有すること。
- 法人のために物品若しくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
- 法人のためにその他の準備的または補助的な性格の活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
- 上記を組み合わせた活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有し、また、その活動の全体が準備的または補助的な性格のものであること。
委託販売税
香港では、日本法人のような非居住者が香港で委託販売を代理人を通じて行う場合には、売上に応じて課される委託販売税があります。具体的には、日本法人の委託を受けて販売をする香港の業者は日本法人への売上送金の際にその売上の1%以下の支払を留保し、四半期ごとに税務当局に申告・納税する義務がありますが、実務上は0.5%を適用しています。
ここで規定されている代理人の定義には、非居住者との関連において、以下の内容が含まれます。
- 香港内において非居住者の代理店・代理人・管財人を務めており
- 非居住者が何らかの香港源泉所得をその者から得ている
Permanent Establishment(恒久的施設)の議論いかがでしたでしょうか。代理人PE話は追って説明する予定です。こういった点は税務アドバイザーなど専門家の経験が生きる分野です。もし気になるなどあれば、お問い合わせ下さい。
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