FATF 日本マネロン法制度に関する評価

各国に反マネロン・テロリストファイナンス(AML/CFT)を提言する国際組織FATFは、2021年8月30日付けにて、2021年6月のFATF会議で報告書として、日本のAML/CFTに関するレポート Mutual Evaluationを発行しました。

http://www.fatf-gafi.org/publications/mutualevaluations/documents/mer-japan-2021.html

FATFは日本のAML/CFT体制について以下の通り一定の評価をしています。

  • 日本はマネーロンダリングおよびテロ資金供与と戦う日本の措置は成果を上げていますが、日本のマネーロンダリング防止およびテロ対策資金調達(AML / CFT)フレームワークの有効性を改善する必要があります。
  • 日本当局は、マネーロンダリングとテロ資金供与のリスクをよく理解しており、国に大きなリスクをもたらす分野でのAML / CFT対策の最前線に立っています。
  • マネーロンダリングとテロ資金供与を調査および起訴するための金融インテリジェンスの収集と使用において良好な結果をもたらしています。また、他国当局とも建設的な協力関係にあり、情報共有をしています。

しかしならが、FATFからは以下の批判がありました。

  • 日本のテロ資金供与リスクは低いとはいえ、法執行機関は、暴力団を含む組織犯罪に関連するリスクなどの主要なリスク領域への対処を含め、詐欺や薬物関連の犯罪を伴うことが多い複雑な大規模な事件の収益のロンダリングにさらに焦点を当てる必要があります。当局はまた、犯罪収益の没収への取り組みを強化する必要があります。
  • 日本当局は、拡散融資のリスクについて企業へのアウトリーチを積極的に行っていますが、制裁回避の無意識の促進を防ぐ措置の効果的な実施を確実にする必要があります。
  • 仮想資産とそのサービスプロバイダーに関連するリスクに対処するために強力な行動をとっており、現在、それらの悪用を防ぐための対策を完全に実施する必要があります。
  • 日本当局は、顧客のデューデリジェンスを含むマネーロンダリングやテロ資金供与を防止するための金融機関および非金融機関の要件を改善する取り組みを優先し、法人や取り決めの誤用を防ぐために有益な所有権情報へのアクセスを改善する必要があります。

今後、日本に係わる海外送金を含め、金融機関においてAML/CFT体制が強化されることになると予想します。

香港Companies Registry  個人情報保護制度

2021年8月16日付け香港Companies Registry発行のCircular (通達)にて、個人情報保護を強化するため、取締役もしくは会社秘書が自然人の場合(法人ではなく)、香港ID(もしくはパスポート)と実際に居住している住所に関しまして、開示保留(マスキング)を選択することができる制度が開始されました(香港IDもしくはパスポートの情報並びに住所を総称して「当該情報」といいます)。

以下3Phaseにて導入されます。

Phase 1 2021年8月23日
Phase 2 2022年10月24日
Phase 3 2023年12月27日

8月23日以後(Phase 1開始後)、香港IDの開示保留を選択するのであれば、最初の4文字(数字を含む)のみを記載する事になります。住所の開示保留を選択するのであれば、取締役もしくは会社秘書を選任した法人(以下、「当該法人」いいます)の登録住所を記入します。

現在 導入後
香港ID     A123456(7) A123
パスポート   ABCD1234567 ABCD12
住所      実際に居住する住所 連絡先住所として法人の登録住所

しかし、本制度を活用するには条件として、当該情報は当該法人にて厳重に管理される必要がありますので、今後警察当局がマネロン調査の対象となると立ち入る事があるかもしれません。また、今後、保管が適切に行われているか確認するため、当該法人に対して臨店検査が行われる可能性は否定できません。

Phase 2が開始されると、当該情報を留保するのではなく、情報自体留保する事が可能になります。その代わりに、当該法人はCompanies Registry に対して当該情報を提出することになります。

Phase 3が開始されると、個人情報の所有者 (Data Subject 即ち本人) はCompanies Registryに届け出をすることで開示留保が可能のなります。

しかし、情報開示が保留されると、金融機関等はどのように本人確認を行うのでしょうか。本人、代理人、株主、管財人(倒産企業)、捜査当局、弁護士、公認会計士、金融機関は、Companies Registryに申請することで、当該情報にアクセスする事が可能です。

尚、株主の名前と住所は設立証明書並びに年次報告書に記載されますが、本通達では非該当になります。

香港法人税の納税について

まず、香港法人に係る税務についてご説明します。

年間売上高がHK$2,000,000 (28,000,000円)以上の場合、16.5%。

年間売上高がHK$2,000,000以下の場合、8.25%。

国際金融都市では最低水準です。

また、上記税制は、香港域内で事業を行った場合です。香港域外、則ち、オフショア控除申請を活用すると、一部もしくは全部が法人税の対象外となります。

監査義務

全ての香港法人 (Limited Company)は、ライセンスを持ったCPAより毎年会計監査を受けないといけません。(無限責任会社、合名会社 、個人事業主の方は、その必要はありません)。しかし、新設会社には例外適用され、設立後18カ月以内に、監査を完了し納税すれば、問題ありません。

納税申告書 (Profits Tax Return)

香港法人は毎年納税申告をする必要があります。納税申告書(Profits Tax) は、毎年決済時期になると送られてきます。提出期限は、発行後原則1カ月なのですが、会計時期により提出期限がかわります。

2020年4月1日から2020年11月30日の期間に決済日がある場合、「Code N」
2020年12月1日から2020年12月31日の期間に決算日がある場合、「Code D」
2021年1月1日から2021年3月末31日の期間に決算日がある場合、「Code M」

Code毎の提出期限は以下です

Code N:                                                        2021年6月15日まで

Code D:                                                        2021年8月30日まで

Code M(利益がでている場合)  2022年1月31日まで

言うまでもなく、決済時期は自由に変更できます。

以下が、Tax Return のサンプルです。

Image Right

年間売上高が2,000,000以下の場合、当該法人が税務申告書を提出する場合、監査報告書を添付しなくても良いです。

香港法人が投資をする場合の税務の扱い

香港法人が投資をする場合、特定の要件を満たせば、投資で得た収益について税務がかかりません。Inland Revenue Department税務局は、ビジネス自体が投資事業で無い事、投資が長期的な行われていること、投資収益が香港外にあること、等様々な要素を判断します。投資収益が税務対象になるか否かは、まず監査役が判断することになります。

香港規制 最新版 仮想通貨規制・ディジタル人民元 2021年夏

2017年頃から、香港はフィンテックをはじめとする、仮想通貨(暗号通貨)業界が盛り上がってきました。2018年にはICO (Initial Coin Offering)の発行による資金調達が行われましたが、詐欺行為が横行したため、証券当局 Securities Futures Commissionが監視するようになります。その後、証券当局は、仮想通貨取引所及び仮想通貨業者(ファンド業者も含む)を規制するため、サンドボックス制度を打ち出し、規制制度を模索します。以後、毎年11月のフィンテックウィーク (Fintec Week)になると、証券当局のトップが「仮想通貨の規制をする」という内容のスピーチをしますが、仮想通貨ファンドの規制は充実しているものの、実際のところ、仮想通貨取引の規制強化には至っていません。 

その背景につきまして、証券当局は、読んで字の如く「証券業」を監視・監督する行政機関になります。米国当局は、一部の中央集権型にて発行される仮想通貨(例 Ripple)が「証券」であると判断する流れはあるものの、未だ仮想通貨が証券であるかは確立されていないの現状です。そうなると、セキュリティー・トークン(ST)のように「証券」として要素がある場合を除き、「証券」ではない暗号通貨について、香港証券当局が管轄を主張することは難しくなってきます。また、中国本土において、ディジタル人民元をはじめとする中央銀行ディジタル通貨(CBOC)の導入が進められている現在、中央政府の方針に反しない為、証券当局として安易な仮想通貨関連規制を控えているようにもうかがえます。

よって、仮想通貨取引には規制がない(Unregulated)の状態が続いていますので、今後の動き 11月のフィンテックウィークを含めた当局の動向を見守りたいと思います。香港ベースのフィンテック企業は成長を続けていますので、アジアの「国際金融都市」の地位を維持するため、前向きな仮想通貨関連の規制導入を期待します。

香港法人 カンパニーチョップ

香港法人にて使用されるカンパニーチョップ (Company Chop)(印鑑)についてご説明します。

実際に使用されているカンパニーチョップ

呼び方は色々ありますが、英語では1を「Round Chop」、2を 「Square Chop」、3を「Common Seal」と呼んでいます。

法定要件の整理

まず、香港会社法 Company Ordinanceにて、Round Chop 並びにSquare Chopは要件とされていませんので、Common Sealは、2014年会社法改正において、法人として採用することを選択できるようになりました。しかし、香港の商習慣として必要とされますので、結局必要とされます。

尚、日本の印鑑証明書の制度がないので、取締役役会にて、印鑑を会社であることを承認する必要があります。通常は、法人設立時のFirst Board Resolutionにて承認します。

用途

それでは、どのような場合に使うのでしょうか。

Round Chopは、主に認め印で、配達があった場合に押印したりします。また、政府機関に提出する際に押印を求められる場合があります。請求書や領収書に押印する企業もありますが、これは法的要件ではありません。

Square Chopに刻印されている文字をみると、

For and on behalf of Visence Professional Services Limited (法人名)

   「 —————————————————————————-

                                                     Authorized Signator(ies) 
              (サイン権限者)

                         」

と書いてあります。

法人のサイン権限者でかたが点線(—–)の上にサインします。よって、Square Chopは契約書などに使われる事が多いです。しかし、前述の通り、法的要件ではなく香港商習慣にて必要とされるため、契約相手からSquare Chopの押印を求められた場合に、押印します。尚、香港会社法上は、「For and on behalf of (法人名)」と書いて、サインすれば、当該法人の代表者がサインしていることになり、法人として契約が締結できてしまいますので、注意が必要です。

  • Common Sealは、Deedという特殊な権利書を発行する場合に必要です。鉄製の道具の内部に会社名が刻印されていて、金色・赤色のシールと紙を締め付けることで、印字されます。Deedを発行することで、契約当事者での権利だけでなく、随伴性を維持することが可能になります(別の機会に説明いたします)

調達先

法人設立時に、印刷屋さんにグリーンボックスを作成してもらいますが、グリーンボックスの中に入っています。別途、必要でしたら、上環のMa Wah Lane にて購入できます。

銀行や金融機関

法人によっては、銀行取引において、セキュリティー上の観点から、カンパニーチョップ(Square Chop)とサインを登録し、2つの要件がないと入出金できないようにする場合があります。しかし、登録をしていなければ、カンパニーチョップは銀行取引で必要としません。しかし、金融取引でも年金(MPF)関連の届出書には、カンパニーチョップが必要とされますのでご注意ください。

カンパニーチョップについてご不明な点がありましたら、弊社までお問い合わせください。

香港法人 BR とCIの違いについて

Certificate of Incorporation(「設立証明書」もしくは「CI」)とBusiness Registration (「営業登録証」もしくは「BR」)の違いについてご説明します。

Certificate of Incorporationについて

読んで字の如く、「法人」設立時、即ち法人設立申請をした後Companies Registry (「法人登記所」もしくは「CR」)が承認した日に発行されます (書類不備があったり、社名として認められない場合には、設立承認が下りない場合があります。別の機会に法人設立について説明いたします)。

ここでの「法人」とは、「Company Limited by Share (株式会社)」 と 「Company Limited by Guarantee (有限責任保証会社)」をさします。言い換えれば、この法人形態はCompanies Registry の管轄になります。 「Limited Partnership 有限責任合名会社・組合」は、Certificate of Registration (登録証明書)が登録時にCompanies Registryより発行されます (Limited Partnership の法理について別の機会に説明します)。 

Unlimited Company (無限責任会社)やPartnership (合名会社・組合)は、Companies Registry の管轄ではないので注意が必要です。

ここで注意が必要なのは、Certificate of Incorporation (もしくはCertificate of Registration)は、設立時(Limited Partnership の場合、登録時)の発行されるものですので、設立以後の現在証明をするものではありません(設立後、抹消 (Deregistration)されている場合は否定できません)。 現在証明をするには、HK$170 にてCertificate of Continuing Registration を取得する必要があります (取得には、オンライン申請後、Admiralty にあるCompanies Registryビル13階に出向くか、郵送です)。

また、香港には、日本の全部事項証明書のように、(後術のBRを除き)一挙に法人情報が閲覧できるシステムが存在せず、変更事由毎の届出書が登記されるだけです。年次報告書NAR1は毎年一回提出が必要ですが、提出時には日本の全部事項証明書のように一挙に法人情報が確認できます(しかし、提出後の情報について、逐一登記情報を確認する必要があります)。

以下がCertificate of Incorporationのサンプルです。左上にある No. がCompany NumberもしくはCR Number ( 法人番号)です。

Business Registration について

Business Registration は、「事業開始」(Business Commencement) 後30日以内にInland Revenue Department(「税務局」もしくは「IRD」)に登録しないといけません、

しかし、前述の法人の場合、設立時にCompanies Registry からInland Revenue Departmentに 自動的に情報共有され、Certificate of Incorporation発行時に、Business Registrationも発行されます。以後、法人情報のアップデートがCompanies Registryで行われると、自動的にInland Revenue Departmentに共有されるはずですが、実際のところうまく連携できていないケースがあります(Inland Revenue Department に出向き、修正申請をする場合もあります)。

Unlimited Company (無限責任会社)やPartnership (合名会社・組合)を登録する機関は、Inland Revenue Departmentに限られます。また、フリーランスや個人事業主の方は、本部以外で支店設立する場合には、この登録をする必要があります。 言い換えれば、Certificate of Incorporation がなく、Business Registration しかありません。

Business Registrationは、毎年(選択すれば、手数料は割高ですが3年毎)に更新されます。1年版Business Registrationの値段は、HK$250です(年々変更されますので注意が必要です)。 香港版「均等割り」制度と言っても過言ではありません。コンビニ、銀行送金・FPS、クレジットカードにて決済が可能です。

以下がBusiness Registration のサンプルです。 住所、事業開始日、業種等が記載されているので、Certificate of Incorporationと比べるとより、法人情報が確認できますので、銀行や公共機関にて事業実態を把握さる際に活用される傾向にあります。Business Registration には番号 (Certificate No)があります(青色)ので、前述のCR Noとは異なりますのでご注意ください。 本店は Certificate No の隣の番号が 「000」で、支店は「001」以降になります。Business Registrationの支払い完了すると、支払日・金額が刻印されます(オレンジ色)。

Business Registrationを紛失した場合は、灣仔 Revenue Tower4階にいき、届出書を提出すれば再発行してもらえます。また、Business Registrationの登録情報も申請後、閲覧可能です。しかし、注意が必要なのは、Revenue Tower4階はアポイントを取っているか、入館チケットが必要です (朝8時半ごろから、Revenue Towerの外でチケットを配っています)。

オフショア法人の活用法〜イーコマース・暗号通貨業の経営されている方や、海外にて合法的に資産運用を検討されている方向け

オフショア法人の活用法 パート1

イーコマース・暗号通貨業の経営されている方や、海外にて合法的に資産運用を検討されている方は必見です。

新型コロナによりビジネス業態は激変し、事業形態・業界によっては、リモートでタスクが完結する時代になりました。 場所に拘らず仕事できるのであれば、ビジネス拠点を税率が低い海外に移す事もできます。また、コロナ対策に追われる政府は多額の税金を投入しており今後増税するのは明確な為、効率的な資産運用するのであれば、税務対策は欠かせません。

「オフショア法人」を運用することは合法で、実際、世界各国の証券取引所において英国領バージン諸島やケイマン籍にて上場している企業は無数にありますが、なぜかネガティブなイメージがあります。本書では、オフショア法人について正しく説明することで、間違ったイメージを払拭し、合法的な税務対策や資産運用に役立て頂ければと思います。

「オンショア」と「オフショア」

「オンショア (英語 “Onshore”)」とは「沿岸の」という意味で、本書では、製造業、サービス業、自然資源輸出などの実質的経済が形成されている国を指し、(目安として)そういった国で設立された法人は20%以上の法人税が納めていると想定します。イメージとして、北米、南米、日本、中国本土、インド、EUといった大経済圏です。

オンショアの対義語に「オフショア(英語 “Offshore”)」という言葉あります。「沖合の」という意味ですが、オンショアとは異なり、実質的経済は脆弱で、(オフショア金融市場が確立される以前の経済状況です)観光業・農業漁業・港湾事業などで生計を立てている場合が多かったでようです。広義に、「オフショア」と呼ばれる国・地域は世界で300以上あります。ケイマン(Cayman Island)、英国領バージン諸島(British Virgin Island)、バミューダ(Bermuda)、セイシェル(Seychelles)のような小さな島国や、スイス、オランダ、ルクセンブルク等内陸にあるヨーロッパ諸国も該当し、パナマ (Panama)、シンガポール、香港などの港から発展した都市国家も有名です。

1960年代において、オフショア制度(後述)が導入され、域外収益無税化(オフショア域外で得た収益は無税)や法人設立の簡素化、非居住者による法人所有が認められ、オンショア諸国から資本を誘致するようになりました。多くのオフショア国家は世界有数の金融都市国家として発展を遂げ、現在でも厳しい国際金融規制の下持続的に成長をしています。

尚、上記オフショア国家には「国」以外に「地域 (英語 Territory)」や「州 (英語 State)」も含まれいます。「地域」とは、主権国もしくは連邦国に属しつつ税法や会社法を独自に制定できる自治政府が統治する地域(Territory) を指します。例として、英国領バージン諸島(British Virgin Island)のように、英国が主権国(Sovereign)ですが自治権がローカル政府に権限委譲されいるため、当該地域内にて独自のオフショア政策を制定することができます。また、デラウエア(Delaware)州(米国)やラブアン(Labuan)(マレーシア)のように連邦国家に属していますが、会社法や税法などは州独自の政策をとるができる州も、広義には「オフショア」として認識されます。(以下、「国」、「地域」および「州」を総括して「オフショア」もしくは「オフショア国家」といいます。)

オフショア法人について

本書では、オフショアにて設立された法人を「オフショア法人」と定義します。

まず、オフショア国家には独自の税法や会社法がありますので、当然ながら設立以前に、必要最低限のルールを理解する必要があります。しかし、数多くあるオフショア国家の中、個々のオフショア国家の法制度を理解するのは不可能です。 

そんな中、手がかりにあるのは、(法律学の教科書にある)法体系にて分類することです。即ち、この世界にある法制度は大きくわけて、英米法圏系(Common Wealth Jurisdiction)か大陸法圏系(Civil Jurisdiction)の2通り、どちらかに当てはめていくことで、理解を深めることができます。

ケイマン、英国領バージン諸島、バミューダ、セイシェル、シンガポール、香港は英国法の伝統を継受しているので、定款や会社書類は英語記載され、書きぶりや専門用語も統一されていることから、役会や株主総会の運営等についてある程度予知できる内容になります。シンプルに資産運用をしたいのであれば、英米法圏のオフショア法人を設立するのがベストかもしれません。

対照的に、スイス、オランダ、ルクセンブルク、パナマ(旧スペイン領)は大枠では(ヨーロッパ)大陸法圏の伝統を受け継いでいるため(日本法も大陸法圏の一部)、概念的に共通していますが、言語が英語ではなくヨーロッパ言語になるので、どうしても日本人にとってハードルが上がってしまいます。しかし、特別な理由がある場合は、その限りではありません(ユーロ圏で事業を展開するならスイス、オランダ、ルクセンブルク、船舶を扱うのであれば、パナマ)。

オフショア法人の活用法 パート2

オフショア法人のメリットと用途

国・地域により異なりますが、オフショア法人のメリットは以下です。
(1)税務関連。オフショア域外で得た収益について法人税並びに消費税の対象になりません。また、付加価値税や配当税が存在しません。

(2)秘匿性。株主・取締役の個人情報(パスポート番号や住所等)や資本額は開示されない国・地域があります。しかし、香港・シンガポールでは一定の情報は開示されます。

(3)会計関連。資本要件がなく(1ドルから設立可能)、増資・減資手続きが容易で、繰越損益できる期間が無限です。また、決算・監査がない国・地域があります(香港・シンガポール法人には年次監査義務があります)

(4)非居住者でも法人設立が可能で、株主・取締役が1名・1社(自然人が必要ありません)で設立が可能です。

パナマ文書事件と規制強化

2016年4月、モサック・フォンセカという法律事務所が1970年頃より保管していた、オフショア法人の口座情報や株主・取締役の機密情報がハッキングにより流出するという事件がありました。結果、多くの著名人がオフショア法人を所有していることが明るみになりました。この時、オフショア法人を活用するとこが叩かれ、印象が悪くなりました。

パナマ文書事件は多方面にて良い影響がありました。マレーシア政府機関1MDが関連する汚職事件やマネロンも、パナマ文書事件を皮切りに捜査がはじまりました。国際アンチマネロン組織FATFの働きかけにより各国の規制は強化され、共通通知規制(CRS)条約 によりオフショア法人の情報は銀行レベルで共有され、実質経済ルール(Economic Substance Rule) により(一部のビジネスは)オフショアに拠点を保有する要件が確立されました。しかし、逆を言えば、パナマ文書のお陰で、正しくオフショア法人は浄化され透明性が担保され、国際的に認められたビジネスとしてなりました。

設立方法

英国領バージン諸島(British Virgin Island)(以下、「BVI法人」)を例に、設立と口座開設までのながれを説明します。

BVI法人を設立するには、英国領バージン諸島に実際に事業所を構え、専門ライセンスをもつエージェント(「エージェント」)に設立を依頼します。そのエージェントは、香港、シンガポール等の国際金融都市に代理店があり、実際の取引はその代理店を介して行われます。弊社もエージェントと提携しています。

前述の通り、アンチ・マネロンルールや実質経済ルールが厳格化され、発注する前に、申請書(設立する理由等、創設者の住所、オフショア以外の住所、職業、資金の源泉等の情報を記載します)、パスポートコピー、住所証明等をそのエージェントに提出し、本人確認手続きが行われます。特に、BVI法人はこの手続きが厳しくなる傾向にあり、申請が拒否される場合があります。

本人確認手続きが完了すると、エージェントから請求書と伴に、議事録 (First Written Resolution)にて、法人名の決定、事務所の設定(エージェントが提供する住所)、取締役の選任、株式発行等が定められます。First Written Resolutionに調印することで、オフショア法人を購入したことになります。 購入後、グリーンボックスという印鑑、定款、法定帳簿、株券が保管されるファイルがエージェントから送られてきます。

オフショア法人を証明する書類として、設立証明書(Certificate of Incorporation), 定款(Memorandum and Articles of Association), 株主・取締役の在籍証明書 (Certificate of Incumbency), (法人存在証明書)Certificate of Good Standing があります。

尚、Economic Substance Ruleにより、2年目も設立時と同等の審査があり、年会費(設立費用の7割くらい)を納めます。しかし、前述の通り、監査・決算の義務がないため、年会費を納めるだけで、その他の年間費用はかかりません。 

オフショア法人の活用法 パート3

オフショア法人の口座開設について

香港・シンガポールでは口座開設は比較的容易に完了します。しかし、その他のオフショア法人の銀行口座開設は非常に困難ですが、時間をかければ開設は可能です。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、わざわざオフショア(英国領バージン諸島)に行って設立する必要はありません。香港もしくはシンガポール等の国際金融都市にある銀行にて、海外口座として開設をすることが可能です(注意 スイス、ルクセンブルク、オランダ以外のオフショアにある銀行はお勧めしません)。以下、香港もしくはシンガポールにあるHSBC、Standard Charted Bank, DBS, 等の大手銀行にて、法人口座開設を行う事を想定致します。

銀行の口座開設担当者からは、オフショア法人の口座開設を行う上で、以下2点に説明を求められます。

(1)オフショア法人の会社情報を客観的に確認できること。

(2)なぜオフショア法人を活用する必要があるのか。

(1)については、設立証明書(Certificate of Incorporation), 定款(Memorandum and Articles of Association), 株主・取締役の在籍証明書 (Certificate of Incumbency), (法人存在証明書)Certificate of Good Standingを提出するだけでは、口座開設ができないという事です。対策として、透明性を担保するため、例えば、香港にオフショア法人を外国法人(Non – Hong Kong Company) として登記することで、香港のCompanies Registryに会社情報が登記されます。また、香港域内にて税務申告をすることで、銀行担当者への説明が容易になります。

(2)については、事業毎に精査が必要ですが、例えば、BVIに知的財産権を移転することで、BVI法人を活用する理由になると思います。この点、慎重に検討する必要がありますので、ご要望があれば弊社にご相談ください。

尚、BVI法人の銀行口座がなくとも、別途香港法人やシンガポール法人があり口座開設されていれば、その法人をBVI法人の決済口座とすることが可能です(会計・税務的に問題ありません)。また、取締役個人の口座をBVI法人の銀行口座とする方もいます。

コロナ下であっても、リモートにて、日本居住がオフショア法人の法人口座にアクセスすることは可能です。是非弊社にご相談ください。

日本居住者でも活用できるオフショア法人スキーム

日本居住の方(日本法人を所有されている事を前提)がオフショア法人を活用する際、注意すべき税務ポイントは以下2つです。

一つ目は、タックスヘブン税制 (外国子会社合算税制)です。日本法人がオフショア法人の株主となり、オフショアには事業実態がない場合、実質的にオフショア法人は日本法人の一部とみなされ、オフショア法人の収益も日本法人の一部とみなされ、日本法人に課税されるという制度です。


対策として、(当該税制において認められているように) 海外子会社(オフショア法人)との資本率を20%以下に抑えることで「外国子会社」から非該当とすることです。言い返せば、海外企業とパートナーを組み、その企業に株式を81%以上保有してもらう方法です。株主間契約で上手くコントロールすることで、株式が多く保有されていても、オフショア法人をコントロールすることも理論上可能です。契約的に海外企業にパートナーとなる方法は例えば、ノミニーの様な方法など色々とありますので、弊社までご相談ください。

二つ目は消費税です。オフショア法人において、消費税が存在しないのですが、オフショア法人から日本法人に支払いする際、例えば、業務委託契約書に基づく送金するには、(日本法人の年収が1000万円の場合)消費税10%が課され、税務局にて納税する必要があります。しかし、配当にてオフショア法人から日本法人に送金することで、配当税が5%と優遇されます。

以下は、日本居住者が活用するオフショア法人スキームです。 このようなストラクチャーにご興味がある方は是非弊社までご相談ください。

香港SFCマネロン対策の強化

香港証券当局SFCは、今年9月、マネロン対策強化を目的としえ、AML ガイドラインの改定案を発表しました。2018年、国際マネロン対策機関FATFが、Cross-Border Banking Relationship (国境を超える銀行取引)がマネロンの温床になっているという声明を発表したことを受け、米国、英国、シンガポールの金融当局は強化してきました。

同じタイミングで、2012年以降香港HSBC銀行がマネロン事件を見逃していたという報道があり、香港金融当局は敏感になっています。改正案のコアとなる Cross-Border Correspondent Relationship(国境を超える金融取引関係)とThird Party Deposits and Payments(第三者入金及び出金)問題についてご紹介します。

1)Cross-Border Correspondent Relationship

想定する取引として、香港外の証券会社 (「Respondent Bank」といいます)は Correspondent Bank(SFC証券ライセンスを持つ金融機関)に対してオーダーします。オーダーを受けたCorrespondent Bankは、取引所にて自ら約定するか、他のブローカーに転送(Routing)します。FATFが問題視している点は、最終顧客の本人確認はRespondent Bankのみが行っていて、Correspondent Bank側において適切なAMLリスクアセスメントができていないという現状です。また、AML法制度が各国で違うためRespondent Bankのリスクアセスメントに依拠することにはリスクがあると考えています。

従来、対金融機関の本人確認はSimplified Due Diligence が採用され、簡素なリスクアセスメントが行われていましたが、今後は金融機関相手でも通常の顧客と同様のリスクアセスメントが必要になります。結果、AML・KYCの作業負荷が増えることとなります。

2) Third Party Deposits and Payments (第三者からの入金、第三者への出金)

問題視されているシナリオは、以下2つのパターンです。

a) 証券会社が管理する顧客口座に第三者から入金する (Third Party Deposit)
b) 顧客指示による第三者への送金 (Third Party Payment)

昨年のSFC通達(Circular)によると、証券会社がThird Party Deposit とPaymentのリクエストを受けた場合、拒絶するのが基本方針です。例外適用として、Third Party Deposit やPaymentに至った経緯等について社内審査を行い、且つ、ハイリスク扱いとしてモニタリングすることとなりました。実際、通達違反として、今年6月、中堅証券会社の国泰君安証券(Guotai Junan Securities) に対して200万香港ドル(3000万円)の罰金が科せらました。

https://apps.sfc.hk/edistributionWeb/gateway/EN/circular/intermediaries/supervision/doc?refNo=19EC39

改正案では、上記Circular を踏襲しつつ「原則、送金元・送金先のAMLリスクアセスメントは取引開始前に完了する」という条件が加わり、AML審査は一層厳しくなります。

3)証券会社内部管理・監査の強化

改定案では以下の内部統制の強化を求めています
a) 独立したAML Audit 機能の設置
b) AML監査は2年に1回実施
c) Compliance Officer やAML Officer の権限拡充
d) 従業員取引のAMLリスクアセスメントの強化
パブリックコメント期間が12月末に終了し、来年夏ごろまでに改訂版AMLガイドラインは施行される予定です。

香港暗号通貨取引所のライセンス化について

香港証券当局 SFC は、11月4日、暗号通貨の取引規制を強化する方針であることを明らかにしました。法改正の日程や改正内容は今後決定されますが、香港域内において暗号通貨取引を運営する業者(Virtual Asset Trading Platform) は指定される証券ライセンスを取得し、証券当局の管理下において運営することになります。

規制強化の背景として、暗号通貨が資金洗浄に活用されていること香港証券当局は説明しています。一方、新型コロナ休業に多額な助成金を投じてきたOECD加盟国は、今年10月に税収が期待できる暗号通貨を共通報告規準 (CRS) の対象にすることを打ち出しました。

証券当局が暗号通貨業をライセンス化することで「金融機関」とみなされれば、暗号通貨取引所にCRS報告義務が課されます。同時に、顧客状況・財務状況等は各国金融当局に共有されることになります。

香港域内のVirtual Assetの取引について現行法下では無規制ですが、SFCは2018年より、サンドボックス制度において、証券化された暗号通貨(Security Token)について調査を行ってきたことが功を奏し香港におけるSecurity Tokenの整備が拡充されました。尚、暗号通貨取引のサンドボックス制度は事実上の終了に至りましたが、合格者はたったの1社、フィデリティ系のOSLという暗号通貨取引所です。