FATF 日本マネロン法制度に関する評価

各国に反マネロン・テロリストファイナンス(AML/CFT)を提言する国際組織FATFは、2021年8月30日付けにて、2021年6月のFATF会議で報告書として、日本のAML/CFTに関するレポート Mutual Evaluationを発行しました。

http://www.fatf-gafi.org/publications/mutualevaluations/documents/mer-japan-2021.html

FATFは日本のAML/CFT体制について以下の通り一定の評価をしています。

  • 日本はマネーロンダリングおよびテロ資金供与と戦う日本の措置は成果を上げていますが、日本のマネーロンダリング防止およびテロ対策資金調達(AML / CFT)フレームワークの有効性を改善する必要があります。
  • 日本当局は、マネーロンダリングとテロ資金供与のリスクをよく理解しており、国に大きなリスクをもたらす分野でのAML / CFT対策の最前線に立っています。
  • マネーロンダリングとテロ資金供与を調査および起訴するための金融インテリジェンスの収集と使用において良好な結果をもたらしています。また、他国当局とも建設的な協力関係にあり、情報共有をしています。

しかしならが、FATFからは以下の批判がありました。

  • 日本のテロ資金供与リスクは低いとはいえ、法執行機関は、暴力団を含む組織犯罪に関連するリスクなどの主要なリスク領域への対処を含め、詐欺や薬物関連の犯罪を伴うことが多い複雑な大規模な事件の収益のロンダリングにさらに焦点を当てる必要があります。当局はまた、犯罪収益の没収への取り組みを強化する必要があります。
  • 日本当局は、拡散融資のリスクについて企業へのアウトリーチを積極的に行っていますが、制裁回避の無意識の促進を防ぐ措置の効果的な実施を確実にする必要があります。
  • 仮想資産とそのサービスプロバイダーに関連するリスクに対処するために強力な行動をとっており、現在、それらの悪用を防ぐための対策を完全に実施する必要があります。
  • 日本当局は、顧客のデューデリジェンスを含むマネーロンダリングやテロ資金供与を防止するための金融機関および非金融機関の要件を改善する取り組みを優先し、法人や取り決めの誤用を防ぐために有益な所有権情報へのアクセスを改善する必要があります。

今後、日本に係わる海外送金を含め、金融機関においてAML/CFT体制が強化されることになると予想します。

香港Companies Registry  個人情報保護制度

2021年8月16日付け香港Companies Registry発行のCircular (通達)にて、個人情報保護を強化するため、取締役もしくは会社秘書が自然人の場合(法人ではなく)、香港ID(もしくはパスポート)と実際に居住している住所に関しまして、開示保留(マスキング)を選択することができる制度が開始されました(香港IDもしくはパスポートの情報並びに住所を総称して「当該情報」といいます)。

以下3Phaseにて導入されます。

Phase 1 2021年8月23日
Phase 2 2022年10月24日
Phase 3 2023年12月27日

8月23日以後(Phase 1開始後)、香港IDの開示保留を選択するのであれば、最初の4文字(数字を含む)のみを記載する事になります。住所の開示保留を選択するのであれば、取締役もしくは会社秘書を選任した法人(以下、「当該法人」いいます)の登録住所を記入します。

現在 導入後
香港ID     A123456(7) A123
パスポート   ABCD1234567 ABCD12
住所      実際に居住する住所 連絡先住所として法人の登録住所

しかし、本制度を活用するには条件として、当該情報は当該法人にて厳重に管理される必要がありますので、今後警察当局がマネロン調査の対象となると立ち入る事があるかもしれません。また、今後、保管が適切に行われているか確認するため、当該法人に対して臨店検査が行われる可能性は否定できません。

Phase 2が開始されると、当該情報を留保するのではなく、情報自体留保する事が可能になります。その代わりに、当該法人はCompanies Registry に対して当該情報を提出することになります。

Phase 3が開始されると、個人情報の所有者 (Data Subject 即ち本人) はCompanies Registryに届け出をすることで開示留保が可能のなります。

しかし、情報開示が保留されると、金融機関等はどのように本人確認を行うのでしょうか。本人、代理人、株主、管財人(倒産企業)、捜査当局、弁護士、公認会計士、金融機関は、Companies Registryに申請することで、当該情報にアクセスする事が可能です。

尚、株主の名前と住所は設立証明書並びに年次報告書に記載されますが、本通達では非該当になります。

香港には民事再生法・コーポレート・レスキュー法制が存在しない!?

香港法人を閉鎖するには大きくわけて2つの方法があります。

(1)支払い能力がある場合は、De-registration(抹消)という手続きになります。税務局(Inland Revenue Department)からのLetter of No Objectionという承認証書を取得後、会社登記所(Companies Registry)に抹消申請をし、3か月間の官報公示期間を経て完了します。通常は、8か月程で完結しますが、コロナ禍において手続きに大幅な遅延が発生しています。


(2)支払い能力がない場合は、清算Liquidation(「Winding-up」ともいいます)の手続きが必要です。大きく分けて3種類あります。

(ア)Compulsory Winding-up (第三者による強制破産)
(イ)Member Voluntary Wind-up (株主による自主的倒産)
(ウ)Creditor Voluntary Winding-up (債権者による自主的倒産)

清算手続きは、非常に複雑で、Official Receiver’s Officeという政府機関に申立後、( Liquidator (清算人)の選任、監査、債権者への通知・協議、官報公示等の手続きを経て1年以上かけて行われます。また、コロナ禍において、Official Receiver’s Officeが1月末から4月末まで閉鎖していて、相当数の未対応案件が積み上がっていて、遅延が予想されます。

しかし、上記(1)と(2)は抹消・清算手続きになり、あくまでも香港法人が閉鎖することを前提にしていて、債務超過になっても会社を継続したい場合は適用されません。 それでは、香港には民事再生法が存在するのでしょうか?

香港は英国植民地であったため、母法である英国法についてご説明します。英国ではコーポレート・レスキューという民事再生制度が確立されています(米国法のチャプター11と性質上同等)。債務超過になったものの事業再建を望む債務者は、裁判所に申請後、オートマチック・ステイ (Automatic Stay)により財産は保全され、債権者による回収行為や強制執行の行為は禁止されため、債務者は 通常の業務を続けることができます。

それでは、香港にはコーポレート・レスキュー法制は存在するのでしょうか? Companies (Winding Up and Miscellaneous Provisions) Ordinance(香港法第32章)において、残念ながら、コーポレート・レスキューを裁判所が関与する仕組みが確立されていません。現状では、民間レベルの和議による会社再建にとどまります。背景として、以前より制定に向けて何度か議論されましたが、一部の業界団体(金融関連)の強い反対により、コーポレート・レスキュー法が制定することはありませんでした。

しかし、ここ数年で、ライバルのアジア金融都市シンガポールにて、コーポレート・レスキュー法制が整備されたり、コロナ恐慌による会社再編が加速することが予測されるため、本年10月より立法会にて審議される予定です。

香港法人の会社閉鎖・組織再編・民事再生法について、ご質問がありましたら、Visence Professional Services にご相談ください。

香港雇用法 正当理由なしの解雇もしくは不当な雇用条件変更


雇用法(香港法第57章)の第32K条によると、従業員が24カ月以上勤務し同法Schedule 1の「継続雇用」(所謂「418」に該当)とみなされ解雇もしくは雇用条件の変更がなされた場合、従業員として、以下について訴訟を提起することができます。

(1)正当な理由なく解雇されたとする訴え
(2)不当な雇用条件の変更に関する訴え

従いまして、継続雇用となる場合注意が必要ですが、実務では、適切な退職金の支払い以上において第32K条が使用されることはありません。

「継続雇用」は、4週間以上18時間以上雇用が継続される場合に該当します(なので、「418」)。

解雇が正当理由なしに行われるケースは、以下の何れかに該当した場合です。

(1)従業員の怠慢

(2)職務遂行能力

(3)会社規模縮小

(4)法令にて要求される場合

(5)その他重大な理由

裁判所は全体的な状況を勘案し、判断し、上記に該当しない場合の解雇は、不当解雇(Unreasonable Dismissal)となり、復職もしくは退職金の支払いが行われます。

裁判所が不当解雇と判断する場合には、復職がされない場合、最高HK$150,000までの罰金が科せられます(従業員が受け取る事ができます)。

香港ノミニー(Nominee) 制度のまとめ

香港ノミニー制度を活用すると、低コストで起業が可能になり、将来の節税対策や将来の資産運用に備えることができます。


香港をビジネスの拠点とする利点をまとめます。
(1)香港法人( Private Limited Company) の設立コストは日本での株式会社設立より安く、法人登記料は香港$2,000(3万円程度)と委託手数料を含めると総額15万円程。

(2)資本金は香港1ドルから可能で、資本額は自己申告(口座振り込み必要なし)。

(3)香港外収入の法人税課税は0%。香港域内収益は、法人税16.5%(所得$2,000,000以下は8.25%)。消費税、付加価値税、相続税なし。

(4)英国法(Common Law) を起訴とする国際金融都市である香港にい、Fiduciary Business (フィヂューシャリー ・ ビジネス) 所謂「受託ビジネス」が盛んで、ノミニーの法整備が整っていて、信用にかかわるため弁護士法人以外の業者にも2018年よりTCSPライセンス制度。

ノミニーの法的性質について、信託 (Trust)を活用することで、実質的株主が委託者・受益者として決定権を維持しつつ、Nominee Service Provider(以下「Nominee」)を受託者として選任することで、株主として代理登録・権利行使を行う制度を「Nominee Shareholder」 と呼びます。同様に、取締役の権利・義務に関して、実質的株主がNominee を選任し、取締役の代理登録・権利行使・義務履行を行う制度を「Nominee Director」と呼びます。

詳細はこちらをご覧ください。https://startuphk.jp/nominee/

香港新型コロナ 労務対策最新情報(2020年3月20日現在)

2020年1月末の政府の非常事態宣言以降、香港では、厳重な感染拡大措置・入国管理が行われました。2000年初頭のSARSの教訓をいかし、感染封込め措置は徹底的に行われ、その結果、他のアジア主要都市と比較し、感染者数は低水準で抑制されています。

今週になり、欧米諸国渡航者の帰国による「逆輸入」の影響で、若干の上昇傾向にありますが、感染者数は256名、死者4名、退院者数98名 となっています。
最新情報:  https://chp-dashboard.geodata.gov.hk/covid-19/en.html

新型コロナによる香港での労務環境も変化しつつありますので、労務法務の整理をします。

1.外出禁止要請

香港政府には、現段階では「外出禁止措置」を強制する法的権限はないため、あくまでも、不要不急の外出や、大人数での集会・食事は避けることを、政府からのお願いする「要請措置」に留めています。

2.従業員は出勤するべき?
2020年1月末に政府の発表により、不要不急の外出を控え、可能な限りテレワークをす るよう要請がありました。公務員に対しては、自宅待機命令が出されました。

中国政府の権限とは対照的に、現段階では香港政府には、民間企業の活動を制限することはできないため、(繰り返しになりますが)あくまでも「要請」という位置づけですので、従業員を出勤するか否かは個々の企業による判断に委ねられます。公務員は3月初旬より徐々に職場に戻るようになっています。

就業規則においてテレワークや自宅待機の定めがない場合において、後述の整理解雇・無給休暇の場合を除き、給与は発生すると考えます。

テレワークをする際、企業の機密情報が漏洩リスクにさらされます。この際、就業規則を見直す必要があるかもしれません。

3.マスクを着用義務化?

香港政府には、公務員以外の香港居住に対して、外出時マスク着用を義務化する権限は現段階ではないため、あくまでも、マスク着用「要請」になりますが、殆どの香港居民は感染リスクについて敏感であるため、外出する際マスクを着用しています。

それでは、職場で従業員にマスク着用を義務化する根拠はあるのでしょうか?香港雇用法(Employment Ordinance)において、直接的にマスク着用の義務はありませんが、雇用主として従業員の安全を守る義務があります。従いまして、従業員に感染した場合や、会社が入るビルにおいて感染者があった場合等の非常事態において(以下、「職場での非常事態」)、安全確保のため、マスク着用・帰宅することは法的には可能と考えます。

他にも、企業がはいるビルの管理規則 (Deed of Mutual Covenant (DMC))が根拠となりえます。DMCにより、管理権限並びに安全管理等はビル管理会社に委ねられているため、ビル管理会社の判断で、入館する際のマスク着用・検温を義務づけることが法的に可能になります。殆どの商業ビルでは、マスク着用・検温が義務付けられています。

マスク着用を義務化すると、従業員から雇用主に対して、マスク供給・マスク費用建て替えの要請があると考えます。これは妥当な要請と考えますが、市中のマスク事情を勘案し、マスク提供を義務化するのは雇用主に著しい負荷がかかります。現行の香港雇用法上では、マスクの提供義務はありませんが、上記の「職場での非常事態」に該当する場合には、提供が必要と考えます。現在香港でのマスク需要は安定していますが、多くの富裕層や慈善団体から、マスクが寄付されるケースがあります。

この機会に、就業規則をレビューし、マスク義務を明文化するべきと考えます。 例えば、検温について個人情報保護法の注意が必要です。37.5度の体温があるかいなかを確認するだけであるなら特段問題ありませんが、個々の従業員の体温データは「個人情報」となりえますので、検温状態が記帳される場合、厳密には個人情報保護法の観点から同意書が必要になります。

4.整理解雇、無給休暇、休業補償、

急激に景気が悪化するなかで、整理解雇をする雇用主も多くなっております。職金等の詳細は、こちらご覧ください。https://startuphk.jp/introductory/

雇用主から無給休暇 (Unpaid Leave)の要請がある場合があります。当然ながら、新型コロナに感染した場合には「病欠」扱いになり(この際、雇用が終了されると、雇用主は刑事罰を負います。詳細はこちらまで、https://startuphk.jp/termination/)、有給休暇が残っていれば、有給消化することになります。

整理解雇・病欠以外の場合において、雇用法上、無給休暇の扱いについて規定がないため、個々の従業員がその要請に承諾すれば、雇用法上有効になります。しかし、無給休暇を強制されその後退職になった場合には、Constructive Dismissal (退職強要)の問題が発生する可能性があります。 詳細はこちらをご覧ください。https://startuphk.jp/constructive-dismissal/

香港法上、休業補償はありませんが、緊急措置として、諸条件に充足する香港の永住居民に対して、2020年5月頃現金(香港$10,000)がFPS(Free Payment System)により支給される予定です。

香港 雇用契約書、就業規則および「誓約書」の有効性について

香港で就業する際、雇用契約書(「Employment Agreement」)締結するのが一般的です。

雇用契約書の締結がない場合、Employment Ordinance (雇用法)が適用されることとなりますが、雇用契約書の一部分の内容について違法である場合、もしくは制定が不十分である場合において、雇用法の該当法令が適用されるのが一般的です。しかし、理論上は、英国法(Common Law コモンロー)上の口頭証拠排除原則(Parole Evidence Rule)により、雇用契約書の内容に矛盾や否定する場合において、雇用法が適用されない場合がありますのでご注意ください。

それでは、企業として就業規則(Employment Handbook)の作成義務はあるのでしょうか? 特定の業種(例 金融業)において、規制当局により従業員規則は必須になりますが、一般的な香港企業において、就業規則の制定がない場合もありますので、法的要件ではありません。 

法的には、従業員規則は、雇用契約書に記載されることで、参照され組み込まれます(Incorporation by Reference )ので、(適当な手当が施されていれば)雇用契約書と就業規則は一体となりますので、雇用契約を締結する際、就業規則を確認することは合理的なリクエストと考えます。

また、雇用契約書と従業員規則が法的に連動しているのことで、雇用契約内容が従業員に通知のみ(従業員が合意したとみなされ)で自動更新(「自動更新条項」)が制定されている場合がありますが、個人情報保護法上の承諾等について、雇用契約書に記載されるべき(従業員規則の自動更新条項では不十分な)内容があります。

それでは、いわゆる「誓約書」はどのような法的位置づけになるのでしょうか? 雇用契約書もしくは就業規則において、例えば、職務追行上発生した情報保護をするための守秘義務条項がなかった場合、それを補足する為、従業員に一方的に誓約書にサイン(以後、企業側がAcknowledge)するケースが散見されます。

このようなケースは、上記自動更新条項(若しくは、コモンロー上の暗示的な守秘義務 (Common Law Implied Duty of Confidential Obligation))が非該当であると仮定しますが、香港法上は無効という扱いになる可能性が高いです。コモンローにおいて、有効的な契約書を作成するにはある意味「双務契約」であり、約因(Consideration)もしくは対価の交換が必要になります。既に、雇用上の取り決めについて、雇用契約書、就業規則並びに雇用法があり、給与・対価が支払われていますので、約因の交換は既に行われています(Past Consideration 「過去の約因」といいます)。既存契約に、守秘義務を追加するのであれば、別途約因・対価の交換を行う必要がありますので、雇用契約を修正する必要がありますが、Nominal Consideration「名義上の約因」として香港$1を交換する手当は有効です。また、一方的に従業員がサインする「誓約書」(雇用主がサインしない場合)(片務契約)は、コモンロー上契約書としての性質は低く、無効となる可能性が高くなります。 

上記は技術的な問題が多いため、詳細について、専門家にお問い合わせ頂ければ幸いです。

香港雇用契約における雇用終了後の協業避止、勧誘禁止条項について

香港の雇用契約において、雇用終了後に効力発生し(元)従業員の行動を制限する、競業避止条項(Non-Competition Clause)、勧誘禁止条項(Non-Solicitation Clause)や 接触禁止禁止条項 (Contact Prohibition Clause) が記載されている場合があります。 これらを、Restrictive Covenants とかRestraint Clauseと一般的に呼びます (以下、「制限条項」)。

契約書のドラフティングにより内容な左右されますが、一般的元従業員に対して、退職後に以下の効力が発生します。

① 競業避止条項は、競業企業に転職することの制限。

② 勧誘禁止条項は、退職した企業の顧客に対して勧誘を禁止。

③ 接触禁止条項は、退職した企業の従業員やサプライヤーにコンタクトを禁止する。

香港は英国の植民地として英国法(Common Law)を継受しましたが、大昔の英国において、「雇用の自由」を著しく禁止・制限する条項は、公序良俗に反する(against the public interest )とし、無効とするのが原則でした。以後、経済発展を遂げていく上で、裁判所も、企業側の利益を尊重するようになり、総合的状況を勘案し、制限を認めるような傾向になりました。

契約書において、制限条項の内容に左右されるものの、現香港法において、制限条項の合法性は、以下2点です。

① 条項が全体的に勘案して、企業側の正当な利益を防御する(to protect the legitimate interest) 上で、合理的(Reasonable)であること。

② 条項・記載が明白 (explicit) で、誤解の余地がない(unambiguous) であること。言い換えれば、黙示条項(Implied Terms)が除外されますが、 契約書ドラフティングの問題ですので、本書では割愛します。詳細について専門家にお問い合わせください。

一般的に、以下3点に当てはまると「正当な利益」と認定される可能性が高いです。

(1)企業として事業継続性

(2)守秘義務並びに営業秘密の有無

(3)顧客やサプライヤーとのコンタクト(Goodwill 営業権)

上記、「正当な利益」とみなされれば、雇用主として「合理的」な範囲内において制限をすることになりますが、以下の論点が「合理的」判断の対象になります。

(1)期間的な制限
特に、競業避止条項の場合、制限期間が3か月から6か月が合理的な期間となります。

(2)地理的な制限

全世界を制限する事は、おそらく無効になります。香港域内においても、香港全土を制限区域になると無効となる傾向にあります。

最後に、制限条項が有効になるには、就業規則及び契約書が有効である必要があります。詳細は、香港 雇用契約書、就業規則および「誓約書」の有効性についてをご覧ください。 

上記は技術的な問題が多いため、詳細について、専門家にお問い合わせ頂ければ幸いです。

香港転職時 レファレンス・レター(Reference Letter) の扱い

従業員が香港企業を退職する際、就業最終の日に、上司がレファレンス・レター(紹介状・推薦状)を従業員に渡すのが一般的です。

組織形態によりますが、(サイン権限があれば)上司・人事担当が、該当する従業員について以下をレファレンスレターにて確認します。

①就業期間

②ポジション

③仕事内容

④就業態度

レファレンス・レターは非常に重要な書類で、転職の際、原本提示を求める企業は多く、身元確認の一環として、元上司・人事担当者に電話して確認する場合もあり、提示がない場合には、懲戒解雇されたと勘違いされる場合もありますので注意が必要です。ある意味、卒業証書や資格証明書のような位置づけです。

その重要性から、例えば、雇用主が従業員を辞職させたい場合に、「辞表提出」か「レファレンス・レターが発行されない」か、2パターンを提示して、辞職に追い込むケースがあります。「辞職強要」(Constructive Dismissal)の説明について、こちらをご覧ください。

香港法上の整理になりますが、懲戒解雇(Summary Dismissal) された否かに関係せず、雇用主にはレファレンス・レターを発行する義務はありません。

レファレンス・レター発行の義務はないものの、発行することになると、雇用主には法的リスク・義務が伴います。事実と反する記載がある場合には、名誉棄損 (Defamation / Libel ) リスクが生じ、名誉棄損行為があれば、過失責任を追及される可能性があります。元従業員について、真実、公平及び正確な記述をする必要があります。

また、懲戒解雇された従業員について、レファレンス・レターを作成する場合、名誉棄損リスクを軽減する必要があります。詳細は私たちにご相談ください。