昨今の香港情勢を受けて、人に関わるご相談が増えています。今回は香港で人を雇用する上で欠かせない香港雇用法の基本的な知識をまとめています。
1.雇用形態
正社員、契約社員、アルバイト、パートタイムの雇用形態における区別がなく、雇用形態に関わらず「継続雇用(Continuous Employment)」とみなされれば、雇用法上の権利は保護されます。「継続雇用」は、4週間以上雇用され、且つ毎週18時間以上労務提供を行った場合です。
2.試用期間 (Probation Period)
試用期間について、最低必要期間は1カ月で、雇用契約により、3カ月・6か月の試用期間となる場合があります。試用期間中は、解除通知なしに雇用終了が可能ですが、雇用期間終了後は、通知期間は雇用契約により定められますが、最低で7日以上の解除期間になります。
3.最低賃金
2019年5月1日時点で、HK$37.5 (520円くらい)。
4.就業時間(Work Hours)・残業(Overtime)
満18歳以上の従業員について、雇用法上、就業時間・残業の定めが存在しないため、雇用契約書もしくは雇用関連書類(例: 従業員ハンドブック)にて制定されるのが一般的です。15歳~18歳までの従業員が工業施設で雇用される場合、原則、1日の就業時間は8時間まで、週に6日労働で(合計48時間/週)、該当する場合残業代も加算されます。
5.休日(Rest Day) 、法定祝日(Statutory Holiday)、有給休暇 (Paid Annual Leave)
雇用法上、雇用主は従業員に対して7日のうち1日を休日とする必要があります(オフィスワークの場合は、通常、日曜日)。
祝日について、雇用後3か月経過していれば、有給休暇になります(3カ月経過していない場合、休暇取得は可能ですが無休扱いになります)。祝日就業の場合、その祝日の前48時間以内に雇用主は従業員に対して通知し、該当する祝日の60日前後に代休をとらせる義務があります。尚、法定祝日(Statutory Holiday) は年間で12日あり、一般祝日(General Holiday)は 年間で17日ありますが、イースター(キリスト感謝祭)、クリスマス、灌仏会等の宗教的なお休みは一般祝日 であっても、法定祝日ではありません。
有給休暇について、雇用1年後に7日付与され、以後1年毎に1日追加され、最長で1年14日の有給休暇が付与されます。原則付与された年に残存の有給休暇を消費するのが一般的ですが、合意にて翌年にキャリーオーバーされた場合には、翌翌年にキャリーオーバーすることが不可となります。尚、Leave Year (休暇年)や1年未満の有給休暇の扱いについて、お困りの場合は専門家にご相談ください。
6.病欠(Sick Leave)、産休(Maternity Leave)、父親育児休暇(Paternity Leave)
病欠について、入社1年目は月毎に2日、入社2年目以降は月毎に4日、其々付与され、1年で最高で120日の蓄積が可能です。雇用法上は、医師の診断書に基づき、4日間連続以上欠勤した場合のみに、その期間が有給とされますが、実際のところ4日連続の欠勤がない場合でも医師の診断書があれば有給病欠の扱いとする雇用主は多いです。
産休について、原則は10週間与えられ、必要な場合、追加で4週間与えられます。出産までに継続雇用として4週間雇用されていた場合、無休(無断欠勤とみななれない)になり、継続雇用として出産まで40週間雇用されていた場合、過去1年の平均給与の80%が支払われます。
父親育児休暇について、妻が出産する40週間以前から継続雇用であれば、出産前4週間もしくは出産から10週間以内に、5日間(個別もしくは連続で)取得することができます(2019年1月に法改正)。
7.年金(MPF) と労災保険
年金について、雇用主は18歳~65歳までの従業員を60日以上雇用した場合、従業員賃金の5%を年金基金に拠出する必要があります。従業員も、給与が月額香港ドル6,500以上である場合、給与の5%を拠出する必要があります。年金受給は、原則65歳になると一括にて受取が可能です。
労災保険について、雇用主は、労災があった場合に賠償できるよう、法定額の保険に加入する義務がある。詳細について専門家にご相談下さい。
8.退職金 (Severance Payment) ・長期サービス金 (Long Term Service Payment)
懲戒解雇を除き、2年未満の雇用の場合、退職金の支給はなく、解雇通知期間の給与の支給のみです。整理解雇(Redundancy)の場合、2年以上5年未満の継続雇用はSeverance Payments (退職金)、5年以上の継続雇用は長期サービス金 (Long Term Service Payment)が支給されます。 金額等の詳細は専門家にご相談ください。
9.紛争解決・労働裁判所
雇用の紛争について、仲裁もしくは調停制度を活用するのも選択肢ですが、原則的に、裁判管轄は Yau Ma Tei (油麻地)にある労働裁判所(Labour Tribunal)になります(控訴はAdmiralty (金鐘) にあるCourt of First Instance) 。労働裁判所において、弁護士(Solicitor / Barrister)の立会は不可で、当事者同士が出廷し(雇用主の場合は、基本的には取締役が出廷)口頭弁論します。
以上となります。雇用や労働問題などお困り・ご相談があればどうぞお問い合わせください。