雇用環境における香港個人情報保護法について

雇用主が、従業員の個人情報をモニターしたり収集したりする場合には、個人情報保護法(Personal Data (Privacy) Ordinance) (以下、「PDPO法」)に抵触しないよう再三の注意が必要です。


PDPO法により、以下の雇用主の行為が禁止されます。

(1)従業員の個人情報を取集(コピーも含む)について、関連する従業員に対して暗示的・明示的な説明がない場合。

(2)収集された当時想定した目的以外の目的で、個人情報が使用(開示・移動を含む)される場合。

雇用主として、上記のリスクを回避するには、従業員ハンドブック等で、従業員に対して以下を説明する必要があります。

(1)どのような情報がモニターされ、収集されるか。

(2)モニター・収集する目的。

(3)どのように当該データが使用されるか。

尚、PDPO法には、個人情報の扱いについて、従業員の承諾を必要としない例外規定を幾つか挙げています。

(1)犯罪捜査・防止する行為

(2)違法行為もしくは重大な不正行為について防止・回避する行為

(3)違法行為もしくは重大な不正行為によって重大な財務的損失が発生する場合に防止・回避する行為。

香港雇用法(Employment Ordinance)の基礎知識 

昨今の香港情勢を受けて、人に関わるご相談が増えています。今回は香港で人を雇用する上で欠かせない香港雇用法の基本的な知識をまとめています。

1.雇用形態
正社員、契約社員、アルバイト、パートタイムの雇用形態における区別がなく、雇用形態に関わらず「継続雇用(Continuous Employment)」とみなされれば、雇用法上の権利は保護されます。「継続雇用」は、4週間以上雇用され、且つ毎週18時間以上労務提供を行った場合です。

2.試用期間 (Probation Period)
試用期間について、最低必要期間は1カ月で、雇用契約により、3カ月・6か月の試用期間となる場合があります。試用期間中は、解除通知なしに雇用終了が可能ですが、雇用期間終了後は、通知期間は雇用契約により定められますが、最低で7日以上の解除期間になります。

3.最低賃金
2019年5月1日時点で、HK$37.5  (520円くらい)。

4.就業時間(Work Hours)・残業(Overtime)
満18歳以上の従業員について、雇用法上、就業時間・残業の定めが存在しないため、雇用契約書もしくは雇用関連書類(例: 従業員ハンドブック)にて制定されるのが一般的です。15歳~18歳までの従業員が工業施設で雇用される場合、原則、1日の就業時間は8時間まで、週に6日労働で(合計48時間/週)、該当する場合残業代も加算されます。

5.休日(Rest Day) 、法定祝日(Statutory Holiday)、有給休暇 (Paid Annual Leave)
雇用法上、雇用主は従業員に対して7日のうち1日を休日とする必要があります(オフィスワークの場合は、通常、日曜日)。

祝日について、雇用後3か月経過していれば、有給休暇になります(3カ月経過していない場合、休暇取得は可能ですが無休扱いになります)。祝日就業の場合、その祝日の前48時間以内に雇用主は従業員に対して通知し、該当する祝日の60日前後に代休をとらせる義務があります。尚、法定祝日(Statutory Holiday) は年間で12日あり、一般祝日(General Holiday)は 年間で17日ありますが、イースター(キリスト感謝祭)、クリスマス、灌仏会等の宗教的なお休みは一般祝日 であっても、法定祝日ではありません。

有給休暇について、雇用1年後に7日付与され、以後1年毎に1日追加され、最長で1年14日の有給休暇が付与されます。原則付与された年に残存の有給休暇を消費するのが一般的ですが、合意にて翌年にキャリーオーバーされた場合には、翌翌年にキャリーオーバーすることが不可となります。尚、Leave Year (休暇年)や1年未満の有給休暇の扱いについて、お困りの場合は専門家にご相談ください。

6.病欠(Sick Leave)、産休(Maternity Leave)、父親育児休暇(Paternity Leave)
病欠について、入社1年目は月毎に2日、入社2年目以降は月毎に4日、其々付与され、1年で最高で120日の蓄積が可能です。雇用法上は、医師の診断書に基づき、4日間連続以上欠勤した場合のみに、その期間が有給とされますが、実際のところ4日連続の欠勤がない場合でも医師の診断書があれば有給病欠の扱いとする雇用主は多いです。

産休について、原則は10週間与えられ、必要な場合、追加で4週間与えられます。出産までに継続雇用として4週間雇用されていた場合、無休(無断欠勤とみななれない)になり、継続雇用として出産まで40週間雇用されていた場合、過去1年の平均給与の80%が支払われます。

父親育児休暇について、妻が出産する40週間以前から継続雇用であれば、出産前4週間もしくは出産から10週間以内に、5日間(個別もしくは連続で)取得することができます(2019年1月に法改正)。

7.年金(MPF) と労災保険
年金について、雇用主は18歳~65歳までの従業員を60日以上雇用した場合、従業員賃金の5%を年金基金に拠出する必要があります。従業員も、給与が月額香港ドル6,500以上である場合、給与の5%を拠出する必要があります。年金受給は、原則65歳になると一括にて受取が可能です。

労災保険について、雇用主は、労災があった場合に賠償できるよう、法定額の保険に加入する義務がある。詳細について専門家にご相談下さい。

8.退職金 (Severance Payment) ・長期サービス金 (Long Term Service Payment)
懲戒解雇を除き、2年未満の雇用の場合、退職金の支給はなく、解雇通知期間の給与の支給のみです。整理解雇(Redundancy)の場合、2年以上5年未満の継続雇用はSeverance Payments (退職金)、5年以上の継続雇用は長期サービス金 (Long Term Service Payment)が支給されます。 金額等の詳細は専門家にご相談ください。

9.紛争解決・労働裁判所
雇用の紛争について、仲裁もしくは調停制度を活用するのも選択肢ですが、原則的に、裁判管轄は Yau Ma Tei (油麻地)にある労働裁判所(Labour Tribunal)になります(控訴はAdmiralty (金鐘) にあるCourt of First Instance) 。労働裁判所において、弁護士(Solicitor / Barrister)の立会は不可で、当事者同士が出廷し(雇用主の場合は、基本的には取締役が出廷)口頭弁論します。

以上となります。雇用や労働問題などお困り・ご相談があればどうぞお問い合わせください。

香港での雇用終了と懲戒解雇について

香港法上、雇用関係を終了する一般的な方法は、解除通知です。

雇用契約に通知期間 (7営業日以上のNotice Period) が記載されていますが、記載がない場合、1か月が原則となります。

雇用法(Employment Ordinance)及びコモンロー(所謂香港法のベースとなる英国法 Common Law)による通知期間の扱いですが、例えば、1カ月の解除通知の雇用契約であれば、通知日から1カ月間雇用を継続し退職する場合と、雇用主が解除通知を発信するのであれば1カ月分給与の即日支払により即日退職する方法 (Payment in lieu of notice) があります。後者の場合は、実質的に即日解雇されるケースを指します。

解除通知は書面で行うのが丁寧ですが、法的に口頭での解除通知が可能です。

雇用主が解雇通知を行う際、従業員が以下に該当する場合、原則解除通知を発行は不可です(通知した場合は刑事罰)。

1)妊娠・産休中の場合

2)病欠

3)職務中に被った病気・怪我が完治してない場合

4)従業員が当局に対して労災関連の通知を行った場合

5)労働組合の活動上の行為による解雇

6)陪審員として欠勤している場合

また、2年以上の継続雇用(Continuous Employment)とみなされる従業員は、雇用主に対して雇用終了についての説明を求めることが可能です。

解除通知によらず雇用終了をする方法として、従業員が以下の行為を行った場合、懲戒解雇 (Summary Dismissal) に該当する可能性があります。 該当する場合、懲戒解雇が行われた日以降の給与並びに退職金の支払いはありません。

1)合法的・合理的な指示を意図的に従わない場合

2)不正

3)詐欺・不誠実行為

4)常習的な怠慢

実務では、懲戒解雇を立証するのは非常にリスクが高い為、通知による雇用終了が一般的です。

上記の内容について、ご質問等ありましたら、Visence Professional Servicesまでお問い合わせください。

香港版パワハラ法 Constructive Dismissal 「退職強要」について 

香港の雇用環境において、上司による極悪なパワハラ的行為を受けた上、雇用主から退職の強要(Constructive Dismissal)をされた従業員は、当該不当解雇に伴い雇用法 (Employment Ordinance)に基づき損害賠償を請求することが可能です。 


一般的な法的要件は以下です

1)上司のパワハラ的言動が、雇用契約上の基礎的条件に違反し、雇用環境が当該従業員にとって退職するほか選択肢がない場合。
状況的な判断になりますが、規準として、雇用主の暗示的信頼義務(implied duty of trust)や 強制退職した元従業員の自信(Confidence)を著しく破壊 (destroyed)した場合です。具体的な事例について専門家にご相談ください。

2)従業員は強制的に退職をさせられ、退職が自主的でないこと。
例として、退職時に給与・退職金以外の支払いがない、レファレンスレターの発行がないことが重要です。

3)退職時、示談書や確認書に調印していないこと。

尚、香港法上、パワーハラスメント対策の法整備は未熟なものの、性別・人種・家族構成等の差別禁止措置について、判例の蓄積は未熟なものの、法整備は整っています。

上記の内容について、ご質問等ありましたら、Visence Professional Servicesまでお問い合わせください。

9/26 【香港人向け】日本投資・移民セミナー開催のお知らせ

ご好評を得ている日本への投資・移民セミナーを9月26日に開催します。今回もランチ時間の開催となります。

安定した社会、充実した医療、香港と比べると安い生活費など日本は有望な移住・投資先として支持が高まっています。本セミナーでは、日本で導入されている投資ビザの概要説明や永住権制度の説明を行います。

日本投資・移民セミナー
日時:9月26日(木)午後1時〜2時(香港時間)
場所:南豊大廈7樓(88號 Connaught Rd Central, Nan Fung Place, Central)
主催:Visence Professional Services Limited
講演:小原淳
   Founder & Managing Director
   Visence Professional Services Limited
   米国NY州弁護士・香港法弁護士(non-practice)、及びJuris Doctor (法職博士号)

お申し込みはこちらからどうぞ。

また、香港人の方に日本に移住できる幅広いソリューションを提供できればと思っています。もし、香港人に対して提供できる投資商品、勤務先、移住ソリューションなどの分野で協業できる企業を探しております。こちらからご連絡いただければ幸いです。

9/19 香港人向けの日本投資・移民セミナーを行いました

9月19日のランチタイムに香港人の方を対象に第3回日本投資・移民セミナーを実施しました。

昨今の香港情勢を受け、香港外への投資や移民への興味が高まっています。こういった中、日本に移民するためのプロセスや日本の不動産投資についてのセミナーをおこないました。

日本は外国人にとって働きにくいといわれる一方、投資をおこない、日本に投資家として長期滞在・永住を検討している人が増えていることがわかりました。昨今では、日本不動産や事業M&Aなど多様な投資を好む香港人の方たちが増えていることを実感しました。

今後も日本投資・移民セミナーは定期的に開催してまいります。

【香港ビジネストピック】香港のマネー・ロンダリング対策は国際機関から高い評価

アンチマネロンの国際機関であるFATF (Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会) は、マネー・ロンダリング(資金洗浄)対策における国際協調を推進するため設立された政府間機関(政府間会合)です。

2008年以降香港のアンチマネロン体制についてFATFをはじめとする国際機関からは厳しい指摘を受けていましたが、先日Mutual Evaluation (相互審査)が昨年2018年10月31日~11月15日まで行われました。 

今年9月4日に、調査内容をまとめた相互審査報告書が発表され、香港の法制度並びにマネー・ロンダリング対策は高く評価されました。国際的に評価される香港は、今後も会社設立及び資金調達するマネーセンターとなります。
https://www.fatf-gafi.org/documents/documents/mutualevaluationofhongkongchina.html

9/19 【香港人向け】日本投資・移民セミナー開催のお知らせ

日本投資移民セミナーのイメージ画像

ご好評を得ている日本への投資・移民セミナーを9月19日に開催します。今回もランチ時間の開催となります。

安定した社会、充実した医療、香港と比べると安い生活費など日本は有望な移住・投資先として支持が高まっています。本セミナーでは、日本で導入されている投資ビザの概要説明や永住権制度の説明を行います。

日本投資・移民セミナー
日時:9月19日(木)午後1時〜2時(香港時間)
場所:南豊大廈7樓(88號 Connaught Rd Central, Nan Fung Place, Central)
主催:Visence Professional Services Limited
講演:小原淳
   Founder & Managing Director
   Visence Professional Services Limited
   米国NY州弁護士・香港法弁護士(non-practice)、及びJuris Doctor (法職博士号)

お知り合いの香港人の方が参加されたいなどのご要望がある場合、こちらからご連絡ください。

また、香港人の方に日本に移住できる幅広いソリューションを提供できればと思っています。もし、香港人に対して提供できる投資商品、勤務先、移住ソリューションなどの分野で協業できる企業を探しております。こちらからご連絡いただければ幸いです。

9/12 香港人向けの日本投資・移民セミナーを行いました

9月12日のランチタイムに香港人の方を対象に第2回日本投資・移民セミナーを実施しました。

昨今の香港情勢を受け、香港外への投資や移民への興味が高まっています。こういった中、日本に移民するためのプロセスや日本の不動産投資についてのセミナーをおこないました。

日本は外国人にとって働きにくいといわれる一方、投資をおこない、日本に投資家として長期滞在・永住を検討している人が増えていることがわかりました。

今後も日本投資・移民セミナーは定期的に開催してまいります。