香港の雇用契約において、雇用終了後に効力発生し(元)従業員の行動を制限する、競業避止条項(Non-Competition Clause)、勧誘禁止条項(Non-Solicitation Clause)や 接触禁止禁止条項 (Contact Prohibition Clause) が記載されている場合があります。 これらを、Restrictive Covenants とかRestraint Clauseと一般的に呼びます (以下、「制限条項」)。
契約書のドラフティングにより内容な左右されますが、一般的元従業員に対して、退職後に以下の効力が発生します。
① 競業避止条項は、競業企業に転職することの制限。
② 勧誘禁止条項は、退職した企業の顧客に対して勧誘を禁止。
③ 接触禁止条項は、退職した企業の従業員やサプライヤーにコンタクトを禁止する。
香港は英国の植民地として英国法(Common Law)を継受しましたが、大昔の英国において、「雇用の自由」を著しく禁止・制限する条項は、公序良俗に反する(against the public interest )とし、無効とするのが原則でした。以後、経済発展を遂げていく上で、裁判所も、企業側の利益を尊重するようになり、総合的状況を勘案し、制限を認めるような傾向になりました。
契約書において、制限条項の内容に左右されるものの、現香港法において、制限条項の合法性は、以下2点です。
① 条項が全体的に勘案して、企業側の正当な利益を防御する(to protect the legitimate interest) 上で、合理的(Reasonable)であること。
② 条項・記載が明白 (explicit) で、誤解の余地がない(unambiguous) であること。言い換えれば、黙示条項(Implied Terms)が除外されますが、 契約書ドラフティングの問題ですので、本書では割愛します。詳細について専門家にお問い合わせください。
一般的に、以下3点に当てはまると「正当な利益」と認定される可能性が高いです。
(1)企業として事業継続性
(2)守秘義務並びに営業秘密の有無
(3)顧客やサプライヤーとのコンタクト(Goodwill 営業権)
上記、「正当な利益」とみなされれば、雇用主として「合理的」な範囲内において制限をすることになりますが、以下の論点が「合理的」判断の対象になります。
(1)期間的な制限
特に、競業避止条項の場合、制限期間が3か月から6か月が合理的な期間となります。
(2)地理的な制限
全世界を制限する事は、おそらく無効になります。香港域内においても、香港全土を制限区域になると無効となる傾向にあります。
最後に、制限条項が有効になるには、就業規則及び契約書が有効である必要があります。詳細は、香港 雇用契約書、就業規則および「誓約書」の有効性についてをご覧ください。
上記は技術的な問題が多いため、詳細について、専門家にお問い合わせ頂ければ幸いです。