会計・税務

香港法人が中国で企業所得税を課税されるPermanent Establishment(PE)とは

香港と中国の違いも正直いまいちよくわかってないけど、香港に会社作って、中国でビジネスすれば税金は、法人所得税の安い香港で払えば良いの?

Permanent Establishmentは香港と中国の間でも問題になるの?

こういった疑問に答えます。

私は香港で税務アドバイザーとしての10年以上の経験があります。香港は「中国へのゲートウェイ」といわれることもありますが、香港と中国ではそれぞれ別の税法が適用されています。そのため、Permanent Establishment(PE-恒久的施設)の問題は香港と日本同様、香港と中国でも発生します。

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中国におけるPEとは

Permanent Establishment(PE-恒久的施設)とは事業を行う一定の場所等をいいます。中国の企業所得税法においてPEとは「中国において生産経営活動に従事する機構・場所」をいい、管理・営業・事務機構、工場や天然資源の採掘現場、役務提供の場所、建築・据付等の現場および営業代理人を含むとされています。

中国にPEを有する香港法人のような非居住者企業はPEに帰属する所得につき企業所得税を納付する義務があり、税率は中国企業と同様の25%です。

中国・香港租税協定に基づいてPEを分類してみると、次の3つに分けられます。

  • 固定施設PE
    事業の管理の場所(支店、事務所、工場)や6か月超の期間存続する工事現場
  • 代理人PE
    企業を代理して行動し、企業の名において経常的に契約を締結する権限を行使する者
  • 役務提供PE
    企業またはその使用人が行う、コンサルティング業務を含む役務の提供。同一または関連するプロジェクトのために任意の12ヶ月のうち累計で183日を超えて継続して役務提供を行う場合

固定施設PEは代理人PEは比較的わかりやすい概念だと思います。ただ役務提供PEは複雑な点もあるので、さらに以下で説明をします。

役務提供PEとは

2010年、中国の国家税務総局は中国とシンガポールの租税条約の解釈に関する通知(いわゆる75号通達)を発行しています。この75号通達は他の租税条約の類似規定にも適用されることとされており、詳細は以下のようになります。

役務提供PEの判定基準

  • 対象役務:建設、技術、管理、デザイン、研修、コンサルティングといった多様な活動
  • 同一または関連するプロジェクト:商業的な一体性を有する
    例えば、一つのマスター契約でカバーされている、同一の者が異なる契約の下で役務提供を行っている等の場合には、たとえ契約を複数に分割したとしても一つのプロジェクトとみなされます。
  • 累計183日:中国への最初の入国の日からプロジェクト終了の日まで
    この累計は役務提供に従事している個人毎の累計ではなく、プロジェクトに従事するいかなる人が入国していれば1日とカウントされますので留意が必要です。

出向者のPE問題

75号通達では、香港法人や日本法人のような中国外の親会社が中国子会社に従業員を出向させる場合、子会社のリスクと責任おいて当該出向者を管理監督するならば、つまり75号通達にある「真の雇用主」が中国企業であれば、中国外の親会社は中国にPEを有さないとみなされます。出向先の中国企業が真の雇用主とみなされるための要件は以下の通りです。

  • 中国企業が当該出向者に対し命令権を有していること
  • 当該出向者が中国企業の管理・責任の下に勤務すること
  • 派遣元に支払う報酬が当該出向者の労働時間に基づいて算定される(もしくは個人の賃金と関連性がある)こと
  • 当該出向者の役務提供に必要な道具は主として中国企業により提供されること
  • 出向者の人数および資格は中国企業により決定されること
    上記要件を踏まえ、派遣された出向者が中国外の派遣元企業のために働いているとみなされた場合は、上記で述べた役務提供PEの判定基準に従ってPEの有無を判定する必要があります。

出向者給与の送金

中国企業が真の雇用主である出向者に対し、香港法人のような中国外の親会社が給与を直接支払っていても、その事実のみをもって、親会社が中国にPEを有することにはなりませんが、親会社が立て替え払いした給与については中国企業に対し請求を行い、中国企業の費用として認識されなければなりません。

ところがこのような立て替え払いを行うと、中国外の親会社に対して中国企業が提供した役務の対価とみなされ送金時に課税されるという例が散見されますので、中国企業による直接支給により課税リスクを低減させることを検討する必要があります。