私は香港の公認会計士で、香港での税務コンサルティングに10年以上従事しています。事業所得税について今日はご説明しますね。
香港の主要な税金の1つである事業所得税の概要
事業所得税は、法人、個人事業主、パートナーシップ等から稼得される所得に課税される税金です。以下の3要件を満たす所得は香港において課税対象となります。
- 香港で事業活動を行っている
- 香港内で行った事業活動から稼得された所得であること
- その事業からの所得は、香港内で生じたものであること
この3原則の実態への適用は想像以上に複雑なものですが、過去の多くのケースを基に、判例法・租税条例・税務当局実務指針等を充実させ、今ではオフショア・オンショア及びキャピタル・インカムの判定が比較的容易になってきています。
オフショア・オンショア所得の判定方法
まずオフショア・オンショア所得の判定について、以下は事業別に採用される方法です。この判定を踏まえ、オンショア(香港源泉)所得が課税対象になります。
トレーディング(小売も含む) | Contract effected test |
製造業 | Operations test |
サービス業 | Operations test |
次に、以下判定テストの内容を説明します。
Contract effected test:仕入もしく売上の契約のどちらかが香港であれば香港源泉
Operations test: 所得を産み出す主たる業務が香港であれば香港源泉(例:工場が香港、香港店舗でサービス提供)
インカムゲインとキャピタルゲイン
インカムゲインとは事業から稼得する所得を指し、事業外から稼得される所得はキャピタルゲインと呼ばれます。
繰り返しになりますが、香港で課税対象となるのは、インカムゲインのみです。具体的には以下の6要件を踏まえ、キャピタルゲインと判定できれば、香港税制上は非課税になります。
- 購入時における利益追求の意図
- 売却された資産の性格
- 所有期間
- 類似の取引の発生頻度
- 売却に至った経緯
- 資産価値を高めるため及び資産の売却のために行われた行為
事例として、自社オフィスを売却する場合のことを考えてみましょう。
- 購入時には、会社のオフィスとして利用するため、売却して所得を稼得する意図はあまりなく、
- 所有することによって、対象資産の便益を長期に渡り享受するため、
- 必然的に所有期間も長期になり、
- 類似の取引はないもしくは、極めて稀で、
- 今回は急な資金需要等のための売却であるが、
- 大がかりなリノベーションにより資産価値を高めることや、販売促進のような活動は行わない
という6要件が想定され、この場合はキャピタルネイチャー(資本的性格)であると判定できるため、売却益(キャピタルゲイン)は非課税になります。一方、同様に売却損(キャピタルロス)は損金算入できないことに留意が必要です。
税額は、課税所得に事業形態に応じた税率を掛けたものになります。
- 法人:16.5%
- 個人事業:15%
- パートナーシップ:15%
税務上の繰越欠損金は、原則として永久に繰り延べることができます。
香港の税金―事業所得税の申告実務
課税年度
香港では4月1日から翌年3月31日までが課税年度となります。法人の場合は課税年度内に終了する各法人の事業年度がそのまま採用されます。つまり2018年12月31日が期末日である場合、課税年度は2018年1月1日~2018年12月31日になります。
税務申告
Inland Revenue Departmentは事業所得税申告書(PROFITS TAX RETURN)を、通常4月1日に納税者に送付します。
納税者は申告書に必要事項を記入・署名し、必要書類を添付し、原則として1ヵ月以内にIRDに提出する必要があります。
しかし実務上は法人の決算期により申請のタイミングが異なります。具体的には、Block Extension Schemesに基づき、決算日に応じて申告期限の延長を申請を行います。
決算日 | 延長後の期限 |
4月~11月 (Code N) | 翌年4月30日 |
12月 (Code D) | 翌年8月15日 |
1月~3月 (Code M) | 11月15日 |
(1月~3月で損失会社の特例) | 翌年1月30日 |
(注)上記の日にちはあくまで目安で、暦により前後します。
ちなみに課税所得が発生したら、その課税年度終了日から4ヵ月以内にIRDへ報告する義務がありますので、事業所得税申告書がIRDから送付されないことを理由に申告をしないことはできませんので留意が必要です。
香港の納税には予納制度が導入されており、税金を納付する際は、確定年度分の納税に合わせて、翌年度分の予納も行います。詳細につきましては、以下の関連記事をご参考にして下さい。
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