私は香港公認会計士で長年税務アドバイザリーに従事しています。
4〜5月は新課税年度の始まりでもあり、日本からの駐在員の着任が活発な時期です。法人個人所得税問わず香港の税制に関する問合せが増える時期でもあります。今日は香港の税制を説明したいと思います!
香港の税制の特徴
香港の税金に係る執行機関はInland Revenue Department (IRD:内国歳入庁)になり、税制は日本に比べ、シンプルかつ低税率です。また源泉地主義を採用しているので、香港を源泉とする所得にしか課税されません。香港でよく耳にする「オフショア所得」は香港外を所得の源泉するため、香港で課税されないのです。これは日本・アメリカ・オーストラリアといった国々が採用する居住地主義(つまりその国の税務上の居住者は、全世界所得が課税対象)とは対極の方式です。
その他、香港の「キャピタルゲイン非課税」は多くの日本の方が注目される税制ですので、詳細を関連記事で解説しています。
その他、香港では
- 相続税
- 配当課税
- 消費税
- 日本の住民税・事業税のような地方税
がないのも特徴です。
アルコール度数の低い酒類については酒税がないため、ミネラルウォーターより安い金額でビールが売られています。
またRatesと呼ばれる、不動産の時価に応じ4半期毎に納める不動産の保有に係る税もあります。
出典:香港投資環境セミナー, InvestHK
上記の表は、様々な種類の税率を累積したグラフになります。香港は事業所得税(法人事業税)、給与所得税(個人所得税)、社会保障税、消費税(付加価値税)の合計税率がシンガポール、上海と比較しても低いことがご覧いただけます。
香港の税制 所得に対する税と税率
香港における所得に対する税は、①事業所得税②給与所得税③不動産所得税の3種類になります。事業所得税は、法人、個人事業主、パートナーシップ等から稼得される所得の内、香港源泉の所得に課税される税金で、繰越欠損金は、原則として永久に繰り延べることができます。
事業形態による税率は以下の通りになります。
- 法人:16.5%
- 個人事業:15%
- パートナーシップ:15%
香港でよく言われるオフショア所得(香港外源泉の所得)、キャピタルゲイン非課税については、関連記事で解説します。
給与所得税は個人の給与に課税される税金です。こちらも事業所得税同様、香港外源泉の給与所得は非課税になります。税率は課税所得の15%の標準課税方式もしくは累進課税方式(最高税率17%)により算定された税額のいずれか低い方が適用されます。ちなみに独身の方で、15%の標準税率による税額の方が低くなるのは、課税所得がおよそ170万香港ドル以上の場合になります。そのため給与所得税対象者の内、わずか1.7%しか標準課税方式の対象になっていません。詳細については関連記事で解説します。
その他、広範な控除と減税により香港の給与所得者のおよそ半数は給与所得税がゼロになっています。
不動産所得税は香港内不動産の賃貸収入(所得)に課税される税金になり、その税率は15%になります。上記2所得と同様に、香港外の不動産からの賃貸収入はオフショア所得になり非課税になります。詳細については、関連記事で解説します。
香港の税制 税金申告の実務
賦課納税
日本のような申告納税制度ではなく、賦課納税制度を採用しています。納税者は課税所得及び税額を自ら計算し税務申告書に記載して提出します。その後IRD(Inland Revenue Department)は課税所得を査定し、税額を賦課通知書にて通知します。
課税年度
香港では4月1日から翌年3月31日までが課税年度となります。法人の場合は課税年度内に終了する各法人の事業年度がそのまま採用されます。つまり2018年12月31日が期末日である場合、課税年度は2018年1月1日~2018年12月31日になります。課税年度終了後にIRDから発行される税務申告書に必要事項を記入し、所定の期間内にIRDへ提出しなければなりません。IRDはその税務申告書に基づき、査定を行い賦課決定通知書を発行し、異議がなければ、指定された期限内に税金を納付します。
予納とホールドオーバー制度
税金を納付する際は、確定年度分の納税に合わせて、翌年度分の予納も行います。これは翌年の税収を予め確保することを目的をしており、通常は確定年度分と同額が予納分として賦課されます。しかし予め翌年度の課税対象所得が確定年度の90%未満である事が見込まれる等を根拠に予納額の減額を申請することが可能です(ホールドオーバー制度)。
いかがでしょうか。香港の税制がシンプルかつ安いことがおわかりになったかと思います。香港の税制に親しんでいただければ幸いです。
3件のコメント
コメントはできません。