【香港の税金を徹底解説!】給与所得税の概要と実務

書いている私は香港の公認会計士として、税務アドバイスに10年以上携わっています。今日は個人が支払う給与所得税について説明していきます。

香港の税金は給与所得税の概要

香港の給与所得税は香港源泉の個人の給与に課税される税金ですが、低税率、広範な控除と減税により香港の給与所得者のおよそ半数は給与所得税がゼロになっています。

給与所得税の概要

給与所得税は香港源泉の個人の給与に課税される税金です。こちらも事業所得税同様、香港源泉の給与所得が課税対象になります(オンショア所得)。

そのため香港源泉の給与所得を判定する必要があります。具体的には、香港雇用から生じる給与所得は香港源泉と判定され、以下の3要件のうちいずれか1要件が香港内であれば香港雇用になるため、その雇用契約の基づく役務の対価としての給与は課税対象になります。

  • 雇用契約が締結された場所
  • 雇用主の居住場所
  • 報酬支払地

例がありまして、例え香港雇用と判定されても、役務提供がすべて香港外、もしくは役務提供を含め、香港滞在が60日以内の場合は、給与所得は香港で課税されません。

逆に香港雇用ではないと判定されたが、役務提供を含め60日以上香港に滞在した場合は、課税年度内に受領したずべての給与の内、香港役務相当額(通常日割り)は、香港で課税対象になることに留意が必要です。

給与所得税の対象

租税条例には給与所得税の課税対象として以下の性格のものが含まれています。

  • 賃金(Wages)
  • 給与(Salary)
  • チップ(Gratuity)
  • 手数料(Commission)
  • 賞与(Bonus)
  • 謝礼(Fee)
  • 休暇手当(Leave Pay)
  • 手当(Allowance)
  • 臨時収入(Perquisite)

Housing Benefit(家賃補助)

住宅家賃の高い香港では、給与の一部につき雇用主が従業員に住宅を貸与する形をとることで、納税者(従業員)の税負担を軽減させることができます。

雇用主が従業員に住宅を貸与した場合、実際の賃料ではなくみなし賃料が採用されます。

みなし賃料は、給与所得税の課税所得に以下の比率を掛けて算定します。

  • 1部屋のホテル:4%
  • 2部屋のホテル:8%
  • 上記以外の全ての場合(いわゆる通常の賃貸物件):10%

こちらも事例を出して説明します。毎月給与がHKD15,000で別に家賃がHKD5,000(一般の賃貸物件)であった場合を考えます。

Housing Benefit適用なし
課税対象金額:HKD(15,000+5,000)X12=HKD240,000

Housing Benefit適用なし
課税対象金額:HKD15,000X12+(HKD15,000X12X10%)=HKD198,000

Housing Benefitを適用することで、従業員(給与所得税対象者)の税額を軽減することが分かるかと思います。

給与所得税の申告実務

税率

税率は課税所得の標準課税方式(15%)もしくは累進課税方式(最高税率17%)により算定された税額のいずれか低い方が適用されます。ちなみに独身の方で、15%の標準税率による税額の方が低くなるのは、課税所得がおよそ170万香港ドル以上の場合になります。そのため給与所得税対象者の内、わずか1.7%しか標準課税方式の対象になっていません。

累進課税の計算式、減税額の詳細につきましては、https://www.ird.gov.hk/eng/pdf/pam61e.pdfをご参照ください。

控除

様々な控除が認められています。
詳細につきましては、https://www.ird.gov.hk/eng/pdf/pam61e.pdfをご参照ください。

税務申告

課税年度は4月1日から翌年3月31日までです。

給与所得があり、かつ給与所得税を支払う義務がある場合、給与所得税申告書(Salaries Tax Return)を作成する必要があります。

通常IRDは5月上旬に納税者に対し給与所得税申告書を送付し、納税者はこれに給料・賞与・雇用主負担の家賃及び税金・その他の地で支給される給与・扶養家族情報などを記載し、署名の上、1ヵ月以内にIRDに提出します。

また給与所得につき課税所得がある場合は、例えIRDから申告書が送付されなくとも、課税年度終了後4ヵ月以内(7月31日)にIRDへ課税所得がある旨を通知する必要があります。IRDは、雇用主が提出した書類及び個人が提出した給与所得税申告書を基に課税所得を査定し、税額を記した賦課通知書を通常12月頃に納税者に送付します。

香港の納税には予納制度が導入されており、税金を納付する際は、確定年度分の納税に合わせて、翌年度分の予納も行います。詳細につきましては関連記事を参考にして下さい。

https://startuphk.jp/hk-tax/