こんにちは。私は香港公認会計士です。
香港の給与所得税は香港源泉の個人の給与に課税される税金になり、その税金申告には、個人のもさることながら、個人を雇用する雇用主にも支払給与に関する申告義務があることに留意が必要です。今日は雇用主の申告義務について解説します。見逃しがちな分野ですが、しっかりチェックしてくださいね!
なお、個人の申告義務につきましては、(関連記事:給与所得税)を参照下さい。
https://startuphk.jp/salaries-tax/
香港の給与所得にかかる雇用主義務とは
ずばり、これが社員の給与所得にかかわる雇用主義務一覧となります。
租税条例 | 義務 | 罰則 |
Section 52(2) | Employer’s returnの期日までの提出 |
Level 3罰金及び裁判所命令 |
Section 52(4) | IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者の通知 | Level 3罰金及び裁判所命令 |
Section 52(5) | IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月前に文書での雇用契約終了の通知 | Level 3罰金及び裁判所命令 |
Section 52(6) |
1ヵ月以上香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知 | Level 3罰金及び裁判所命令 |
Section 52(7) | Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月間給与の支払留保 | Level 3罰金及び裁判所命令 |
ではそれぞれ「義務」内容を確認していきましょう。
Employer’s returnの期日までの提出
給与所得税上の課税年度(つまり4月1日から翌年3月31日)の各役員・従業員への支払給与・賞与・会社負担住宅費・税金及び年金払込額等につき、雇用主はIRDの発行する申告用紙の発行日から1ヵ月以内にIRDに提出する必要があります。IRDはこの雇用主からの申告書と従業員個人からの申告書を併せて精査するので、申告内容の整合性に留意が必要です。
(申告用紙:BIR56A及びIR56B)
IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者通知
雇用主が、新規に役員・従業員を香港で雇用を開始し、かつ給与所得税の課税対象があると見込まれる場合、雇用開始後3ヵ月以内に、その個人の氏名・住所・雇用開始日及び雇用条件をIRDに通知する必要があります。一方、新規に雇用された役員・従業員が専ら香港外で役務を提供し給与所得税が課されないと見込まれる場合は、通知は必要ありません。
(申告用紙: IR56E)
IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月超前に文書での雇用契約終了の通知
退職を予定する役員・従業員の雇用最終日から1ヵ月前までに、氏名・住所・雇用終了日等を通知する必要があります。
(申告用紙: IR56F)
一か月を超えて香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知
Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月給与の支払留保
海外出張を除き、役員・従業員が1ヵ月以上香港から出国を予定している場合、出国予定日の1ヵ月前までに通知する必要があります。また当該役員・従業員が給与所得税の未納がある場合は、IRDの発行するいわゆるクリアランスレターがない限り、雇用主は通知書の提出から1ヵ月間の給与支払を留保しなければなりません。
(申告用紙: IR56G)
租税条例の罰金
罰金 | Level |
HK$1~HK$2,000 | Level 1 |
HK$2,001~HK$5,000 | Level 2 |
HK$5,001~HK$10,000 | Level 3 |
HK$10,001~HK$25,000 | Level 4 |
HK$25,001~HK$50,000 | Level 5 |
HK$50,001~HK$100,000 | Level 6 |
上表は租税条例が定める、レベル毎の罰金額になります。
給与所得に係る雇用主義務違反に対する、罰金はLevel 3となっておりますが、実務上はよほどひどい違反でない限りは、厳格には執行されていない印象です。
以上となります。給与所得というと、社員のことばかり考えがちですが、雇用主が申告しなくてはいけない義務があることがわかりましたでしょうか。なにかわからないことがあれば、お気軽にご相談下さい!