【香港税務】従業員の給与所得の申告に関し雇用主が果たすべき義務とは

こんにちは。私は香港公認会計士です。

香港の給与所得税は香港源泉の個人の給与に課税される税金になり、その税金申告には、個人のもさることながら、個人を雇用する雇用主にも支払給与に関する申告義務があることに留意が必要です。今日は雇用主の申告義務について解説します。見逃しがちな分野ですが、しっかりチェックしてくださいね!

なお、個人の申告義務につきましては、(関連記事:給与所得税)を参照下さい。

https://startuphk.jp/salaries-tax/

香港の給与所得にかかる雇用主義務とは

ずばり、これが社員の給与所得にかかわる雇用主義務一覧となります。

租税条例 義務 罰則
Section 52(2) Employer’s returnの期日までの提出
Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(4) IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者の通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(5) IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月前に文書での雇用契約終了の通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(6)
1ヵ月以上香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知 Level 3罰金及び裁判所命令
Section 52(7) Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月間給与の支払留保 Level 3罰金及び裁判所命令

ではそれぞれ「義務」内容を確認していきましょう。

Employer’s returnの期日までの提出

給与所得税上の課税年度(つまり4月1日から翌年3月31日)の各役員・従業員への支払給与・賞与・会社負担住宅費・税金及び年金払込額等につき、雇用主はIRDの発行する申告用紙の発行日から1ヵ月以内にIRDに提出する必要があります。IRDはこの雇用主からの申告書と従業員個人からの申告書を併せて精査するので、申告内容の整合性に留意が必要です。
(申告用紙:BIR56A及びIR56B)

IRDに対し、雇用日から3ヵ月以内に、文書での新規雇用者通知

雇用主が、新規に役員・従業員を香港で雇用を開始し、かつ給与所得税の課税対象があると見込まれる場合、雇用開始後3ヵ月以内に、その個人の氏名・住所・雇用開始日及び雇用条件をIRDに通知する必要があります。一方、新規に雇用された役員・従業員が専ら香港外で役務を提供し給与所得税が課されないと見込まれる場合は、通知は必要ありません。
(申告用紙: IR56E)

IRDに対し、従業員離職日の1ヵ月超前に文書での雇用契約終了の通知

退職を予定する役員・従業員の雇用最終日から1ヵ月前までに、氏名・住所・雇用終了日等を通知する必要があります。
(申告用紙: IR56F)

一か月を超えて香港を離れる従業員の離港日1ヵ月前に文書での通知

Section 52(6)に基づく文書提出日から、香港を離れる従業員の1ヵ月給与の支払留保
海外出張を除き、役員・従業員が1ヵ月以上香港から出国を予定している場合、出国予定日の1ヵ月前までに通知する必要があります。また当該役員・従業員が給与所得税の未納がある場合は、IRDの発行するいわゆるクリアランスレターがない限り、雇用主は通知書の提出から1ヵ月間の給与支払を留保しなければなりません。
(申告用紙: IR56G)

租税条例の罰金

罰金 Level
HK$1~HK$2,000 Level 1
HK$2,001~HK$5,000 Level 2
HK$5,001~HK$10,000 Level 3
HK$10,001~HK$25,000 Level 4
HK$25,001~HK$50,000 Level 5
HK$50,001~HK$100,000 Level 6

上表は租税条例が定める、レベル毎の罰金額になります。

給与所得に係る雇用主義務違反に対する、罰金はLevel 3となっておりますが、実務上はよほどひどい違反でない限りは、厳格には執行されていない印象です。

以上となります。給与所得というと、社員のことばかり考えがちですが、雇用主が申告しなくてはいけない義務があることがわかりましたでしょうか。なにかわからないことがあれば、お気軽にご相談下さい

【香港税制】色々な種類の所得がある人にはお得なパーソナルアセスメント

こんにちは!香港の公認会計士です。香港でパーソナルアセスメントを活用することで、税金を節約できる可能性があります。今日はあまり知られていないパーソナルアセスメントについて解説します!

パーソナルアセスメントとは

香港の税金は所得に対し源泉地主義(関連記事:香港税務―概要)が採用されており、香港源泉の

  1. 事業所得
  2. 給与所得
  3. 不動産所得

のみ課税されますが、それぞれ異なる方式で算定されています。

そのため、不動産所得税(関連記事:香港税務―不動産所得税)や事業所得税(関連記事:香港税務―事業所得税)には給与所得税(関連記事:香港税務―給与所得税)のようなPersonal Deduction(控除)が適用不可であったり、不動産所得税では不動産購入に係る支払利息の控除が認められていません。一方、パーソナルアセスメントではPersonal Deduction(控除)や当該支払利息の控除が認められています。

パーソナルアセスメントがお得なポイント

パーソナルアセスメントを利用することで、得ることができる主なポイントは以下の通りです。

  • 不動産所得税では認められない不動産購入に係る支払利息の控除(不動産課税所得を限度額として)
  • 給与所得税では限度額のある自宅用不動産購入に係る支払利息の控除
  • 事業の欠損金の他の所得との合算
  • 不動産所得税や事業所得税では認められないPersonal Deduction(控除)の適用
  • 不動産所得税や事業所得税では認められない低税率の累進課税の適用

事業の欠損金の他の所得との合算については、自身の他の所得と合算した上でも、欠損金が残る場合は、配偶者の所得と合算することが可能です。それでも欠損金が残る場合は次課税年度以降に繰り越しできます(永久繰越)。

パーソナルアセスメントの申請要件

パーソナルアセスメントは誰でも申請できるわけではありません。具体的に、以下の3条件を満たした人が申請できます。

  1. 個人(自然人)、
  2. 18歳以上で(両親が死亡の場合は18歳未満でも可)
  3. 香港永住もしくは一時的居住(結婚している場合は、配偶者も永住もしくは一時的居住)
    している場合に申請可能です。

香港永住とは、通常の居住地が香港であることです。
香港に一時的居住とは、

  • パーソナルアセスメントを申請する課税年度に180日超香港に滞在、もしくは
  • パーソナルアセスメントを申請する課税年度を含む、連続する2課税年度において300日超香港に滞在

を意味します。

パーソナルアセスメントの申請

  • パーソナルアセスメントを申請の期限は、パーソナルアセスメントを申請する課税年度の期末日から2年

もしくは

  • ①事業所得②給与所得③不動産所得のいずれかの所得の賦課通知書の最終決定日から1ヵ月

のうちどちらか遅い方です。申請は香港の税務局(IRD)に対し①申請レター②BIR60もしく③IR76によって行われなければなりません。用紙は以下のリンクから入手可能です。

https://www.ird.gov.hk/eng/paf/for.htm

結婚している場合は、必ず夫婦合わせてパーソナルアセスメントを行わなければなりません。例えば、夫はパーソナルアセスメントを選択し、妻は給与所得税を選択するといったことはできません。つまり夫婦のすべての所得が合算され税額算定されることに留意が必要です。

この記事を読んで、パーソナルアセスメントでの申請に興味を持っていただければ幸いです。ご質問はいつでも受け付けていますので、どうぞお問い合わせ下さい。

フリンジベネフィットに対し意外とお得な香港税制

私は香港の公認会計士です。いきなりですが、フリンジネベフィットって知っていますか?現金で受け取らない現物支給のようなものをさします。香港ではフリンジネベフィットにすることで課税対象外になるケースがあります。今日はフリンジネベフィットを説明します!

フリンジベネフィットの概要

フリンジベネフィットとは、企業などが、その役員や従業員などの給与所得者に対し、賃金・給与以外に提供する経済的便益を指し、例としては、社用車の個人的使用、クラブメンバーシップ、雇用主からの無利息もしくは低金利の借入の他、住居において雇用主の支払う光熱費等が含まれます。

英語の fringe は「布、帯、肩掛けの房のふち飾り」、「ふさ飾り」の意味であり、benefit は「利益」「給付」です。給与本体とは別に提供される便益という捉え方から、「付加的給付」、「付加給付」、あるいは、「追加(的)給付」などと訳されることが多いです。

また、給与ではないが便益であることから「経済的便益」、また、しばしば金銭ではなく現物で支給されることから「現物給与」などとも訳されることもあります。

フリンジベネフィットに係る香港の税金

租税条例9(1)(a)(iv)及び9(2A)により、香港で課税されるフリンジベネフィットは、

  • 現金に交換可能な便益
  • 雇用主から支払われる子女の教育費(雇用主が支払い義務を有していても)
  • 雇用主が提供する休日旅行「Holiday Journey」(雇用主が支払い義務を有していても)

になり、

  • 現金に交換できない、
  • 従業員の支払義務を肩代わりしない

限りにおいては、当該便益は給与所得から除外されることになります。

例えば、雇用主(会社)が従業員用に契約している住居についても、

  • 当該使用権を直接現金化できず、
  • 会社契約のため、従業員には支払義務がない

ため、給与所得税の課税対象になりませんが、特別の規定により、みなし賃料が採用されております(関連記事-給与所得税)。

https://startuphk.jp/salaries-tax/

その他、当該住居の光熱費についても、雇用主がChina GasやHong Kong Electric(香港のガス・電力会社です)と直接契約し会社が支払っている場合、給与所得税が課税されることはありません。

社用車についても、同様の取り扱いになり、個人的使用であったとしても給与所得税が課税されることはありません。これの意味するところは、会社が購入した社用車を、会社の事業所得税上、最終的には全額を損金算入とする一方で、役員を含む従業員が当該社用車の個人的利用も含めた使用に、一切の給与所得税がかかりません。

そのため、この規定が香港でよく高級車を目にする一助になっています。上記以外の主なフリンジベネフィットとしては、医療保険転売不可の食事券無利子・低金利の貸付があります。

税金の金額が変わる!フリンジベネフィットの取り扱い上の留意点

一方、従業員個人が契約し会社がその支払いを肩代わりするのは、給与所得税の課税対象になるので、留意が必要です。例えば、上記のChina GasやHong Kong Electricの光熱費の支払いについて、従業員自身が契約者で、会社が支払うような場合は給与所得税の対象になります。つまり下表のように、同じ光熱費にも関わらず、アレンジをかえるだけで、従業員の給与所得が増えることになります。

契約者 会社 従業員
事業所得税(会社) 損金算入 損金算入
給与所得税(従業員) 課税対象外 課税対象

上記は光熱費ですが、ゴルフクラブの会員権など、金額の大きいものは給与所得税への影響も大きくなることに留意が必要です。

いかがでしょう。香港のフリンジベネフィットは税制上お得なものになっています。もっと詳しく知りたい、これはフリンジベネフィットになるのかなど、何かご質問あればどうぞお気軽にご質問ください

【意外と盲点】香港での代理人PEによる課税

私は日本人では珍しい香港の公認会計士です。税務アドバイザーとして10年以上のキャリアがあります。今日は代理人PEについて解説します。日本法人が課税を受けるリスクやBEPS対策の行動計画もわかりやすく説明したいと思います!

Permanent Establishment(PE)とは

Permanent Establishment(PE)とは恒久的施設を指し、日本・香港租税条約上では、OECDモデル租税条約に従い、「事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と定義されています。概要については、以下の関連記事を見てください。

PEを日本・香港租税協定に基づいて分類してみると、次の3つに分けられます。

  • 固定事業所PE
    事業の管理の場所(支店、事務所、工場等)
  • 建設工事PE
    12ヵ月超の期間存続する工事現場
  • 代理人PE
    企業を代理して行動し当該企業の名において契約を締結する権限を常習的に行使する者

このうち、今回は意外と盲点の代理人PEについて解説します。

この代理人PEは、規定の詳細は多少異なるものの、日本・香港・中国の基本的な考え方は同様で、日本法人が香港に代理人を有する場合、香港法人が中国に代理人を有する場合、そして日本法人が中国に代理人を有する場合のいずれにも適用されるので留意が必要です。

事例で考えてみる 代理人PEとは

以下の事例をもとに考えていきます。

例えば、ある日本法人が香港に製品を販売したいと考えたとき、当該日本法人が香港に支店や子会社を設立せずに、既に香港市場に知見のある香港の代理人を通して、自社製品を販売するケースがあります。

香港代理人は日本法人からの製品販売を請負い、香港商社に当該日本法人の製品を販売します(代理人が直接製品仕入をする場合もあれば、商社の紹介に留まり、製品仕入に携わらないケースもあります)。日本法人は香港代理人を通して香港商社に製品を販売し、当該商社は他の香港法人に日本法人の製品を販売します。通常、代理人には売上に応じた手数料が支払われます。このようなケースにおいては、日本法人は香港法人と取引をしているに過ぎず、香港では課税が発生しません。

しかし、時に業務簡素化や代理人との長年の関係に基づき、香港代理人に香港での製品販売に係る契約交渉や、契約締結の権限を委譲することがあります。つまり香港代理人が「日本法人の名義において契約を締結する」ことがあります。

この場合、当該香港代理人は実質的に当該日本法人の営業活動を担っているため、代理人PEを構成することになります。言い換えれば、日本法人が香港に支店や子会社を設立して、営業活動を行っていることと実質的には同様のことを代理人を通じて行っているだけであり、日本法人の製品販売から生じる所得は香港源泉であるので、課税しますという理屈です。

この場合、香港代理人が日本法人に代わり、その売上代金や手数料の一部を留保することで、事業所得税を納税することになります。また香港代理人が日本法人の製品を棚卸資産として保有する場合は、代理人PEと判断されますので留意が必要です。

代理人PEとは

例えば、ある日本法人が香港に製品を販売したいと考えたとき、当該日本法人が香港に支店や子会社を設立せずに、既に香港市場に知見のある香港の代理人を通して、自社製品を販売するケースがあります。

香港代理人は日本法人からの製品販売を請負い、香港商社に当該日本法人の製品を販売します(代理人が直接製品仕入をする場合もあれば、商社の紹介に留まり、製品仕入に携わらないケースもあります)。

日本法人は香港代理人を通して香港商社に製品を販売し、当該商社は他の香港法人に日本法人の製品を販売します。

通常、代理人には売上に応じた手数料が支払われます。このようなケースにおいては、日本法人は香港法人と取引をしているに過ぎず、香港では課税が発生しません

しかし、時に業務簡素化や代理人との長年の関係に基づき、香港代理人に香港での製品販売に係る契約交渉や、契約締結の権限を委譲することがあります。つまり香港代理人が「日本法人の名義において契約を締結する」ことがあります。この場合、当該香港代理人は実質的に当該日本法人の営業活動を担っているため、代理人PEを構成することになります。

言い換えれば、日本法人が香港に支店や子会社を設立して、営業活動を行っていることと実質的には同様のことを代理人を通じて行っているだけであり、日本法人の製品販売から生じる所得は香港源泉であるので、課税しますという理屈です。

この場合、香港代理人が日本法人に代わり、その売上代金や手数料の一部を留保することで、事業所得税を納税することになります。また香港代理人が日本法人の製品を棚卸資産として保有する場合は、代理人PEと判断されますので留意が必要です。

BEPSの行動計画7(PE認定の人為的回避の防止)に基づく代理人PE

BEPSとはBase Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転)を意味し、現地税制や国際課税原則の観点からは合法ではあるが、法人税収を著しく減少させる国際的税務プランニングのことです。

皆様も国際的な企業が、租税回避地に法人を設立し、その法人を通して取引を行うことでグループ全体の課税額を抑制するという方法をお聞きになったことはないでしょうか。このような税を巡る不公平を解消するため、OECDは世界中の政府・税務当局と連携してBEPS対策の行動計画を策定しています。それがBEPSの行動計画になります。

この行動計画7では、PE認定の人為的回避に対する施策が盛り込まれており、今後世界中で適用されることが予想されますので予め解説します。今回の代理人PEについても、例えば、

香港法人は、日本法人の代理人であっても、①代理人自身の名で契約を締結する、②契約締結に至る実質的な活動を代理人が行い、契約の締結は日本法人が行う等とすることによりPEが回避されるという課題がありました。

そこでBEPSの行動計画7では、実質を重視することにより、代理人PE判定を厳格化しました。日本法人のために香港内で代理行動する香港法人は、以下の要件を満たす場合、代理人PEと判定されることになります。

  • 次のいずれかの契約であること
    -日本法人の名において締結される契約であること
    -日本法人の物品の販売に関する契約であること
    -日本法人による役務提供に関する契約であること
  • 次のいずれかの行為を行うこと
    -香港代理人が契約を締結すること
    -香港代理人が契約の締結に繋がる主要な役割を担うこと

例:

  • B社(香港法人)は、A社(日本法人)の代理人
  • 販売契約

-B社がA社を代表して代理人の名で契約を締結する
-販売契約はA社に対する法的拘束力を有しておらず、顧客にはA社の存在は明かされていない
-A社と顧客の間に直接の契約関係は存在しない
-商品の所有権は、A社から直接顧客に移転される
-B社は、A社のみに販売代理サービスを提供する

現行の規定では、契約が香港代理人の名前で締結されることにより、日本法人に対する法的拘束力を有さない場合は、代理人PEと判定されません。しかしBEPSの行動計画7の規定では、香港代理人が、日本法人を代表して活動を行い、頻繁に契約を締結し、且つ当該契約が日本法人が所有している、または使用権を所有している財産の所有権の譲渡または使用権の付与に関わる場合は、香港代理人はPEとして判定されるとしています。

盲点でもありややこしい論点も含む代理人PEですが、いかがでしたか?

もし気になる点などあれば、何でも質問してみてくださいね。

香港オフショア会社の法人口座開設手続き【最新情報】

香港をオフショア会社の拠点とする場合、銀行口座が必要なケースがあります。

オフショア会社設立後、直ちに法人口座を設定したいところですが、残念ながら口座開設プロセスが年々厳しくなってきていて、開設完了までに時間が掛かる若しくは開設まで取合ってもらえないケースが多いのが現状です。

その背景には、アンチ・マネロン及びカウンター・テロリスト・ファイナンス法(香港法第615章)の取締強化を受け、香港金融管理局が銀行に対してもKYC (Know Your Customer)規制を強化したことにあります。

香港金融管理局
http://www.hkma.gov.hk/eng/other-information/ac-opening/

本書では、香港法人口座開設のプロセスの流れ、要件、注意点及びノウハウについてご説明します。

香港での法人銀行口座開設プロセス

2018年5月現在、個々銀行により実務レベルでの違いはあるものの、香港での法人口座開設には以下のプロセスを踏むのが一般的です。

STEP 1 電話若しくはオンラインにて口座開設について問い合わせ
STEP 2 申請書類提出
(銀行によっては、申請書類提出と以下STEP4を同時に行う場合があります)
STEP 3 銀行内での審査
STEP 4 取締役の来港インタビュー
(事前アポイントが必要。混んでいてアポイントがとれず、その分遅延する場合があります)
STEP 5 審査手数料・初期デポジットの支払い(STEP 4で求められるケースがあります)
STEP 6 追加書類の提出・メールでの事実確認
STEP 7 結果通知
(口座詳細通知とオンラインバンキング設定やクレジットカード発行手続等のガイダンス)

法人口座開設設定までに要する時間

銀行からは、最低でも1か月で、通常は2か月を要すると銀行からは説明がありますが、プロセス短縮の余地があります。その方法として、銀行と会社・取締役の信頼関係、知人の紹介(Reference Letter ・推薦状を提示)、今後のビジネス展開に銀行として期待がある(下記「ビジネスプラン」を参照)、数千万円超の当初の預金予定額(見せ金で小切手の提示を勧めるケースもあり、多ければ多いほど効果的です)などがあります。

取締役インタビュー

上記Step 4について、銀行との交渉余地はありますが、取締役が香港に来て銀行とのインタビューをするのが一般的な口座開設の条件です。インタビューの目的は、本人確認も兼ねていますが、主に直接取締役に会い、取締役の口からビジネスプラン(詳細は、下記参照)や今後の展望について英語・中国語にて伺うことです。所要時間は30分~1時間ほどです。
取締役の最低参加人数とインタビューの法的要件について後述します。

審査手数料・初期デポジット支払い

銀行により要件は様々ですが、一般的に手数料がHK$ 500~1,000くらいで、初期デポジットがHK$30,000~50,000くらいです。初期デポジットが口座開設後に最低限口座に維持する金額になります。未だオフィス会社の銀行口座を開設されていないので小切手を作成するのは矛盾していますが、現地従業員、知人、コンサルタントにご相談ください。

審査が下りなかった場合は、初期デポジットは返却されますが審査手数料が戻ってこないケースがあります。

事前に口座開設の銀行員に交渉して全額戻ってくるように交渉する必要があります。

ビジネスプランの内容について

銀行からは、ビジネスプランについて執拗く質問されますので、丁寧に説明する必要があります。以下が一般的に聞かれる項目ですので、可能か限り英語・中国語でパワーポイントで纏めると効果的です。

  • ビジネス・業種
    • 注意が必要なのは、オフショア機能の説明は控えあくまでも香港の事業を強調することです。
    • また、当該ビジネスに許認可が必要な事業の場合(例:證券ライセンス)、証明書の提示が必要です。申請中の場合、その旨説明しますが、許認可取得が困難と銀行が判断した場合、審査に時間がかかります。
    • 違法な事業・現規制環境下で問題視されるビジネスは取合ってもらえないケースがあります。
  • 取引先について
    • 収益予測
    • 取引が行われる国・地域
    • 取引先(交渉中・守秘義務の場合は、その旨を説明します)
  • 株主・実質的支配者
    • 株主構成を示すストラクチャー・チャート
    • 親会社のビジネス概要・総資産、とオフショア会社ビジネスとの関係性
    • 実質的支配者の説明。香港法上、実質的支配者は25%以上のオフショア会社の株式を直接的・間接的に保有する自然人ですが、上記25%のしきい値を10%に設定してKYCをする銀行もあります。尚、株主が上場会社で、その上場会社株式の10%以上を保有する株主が存在しない場合は、その旨説明します。
  • 口座使途
    • 目的
    • 月単位の取引量・額
    • 口座資金の出し入れ方法(例:小切手、現金、TT、投資・証券取引)
  • 香港の経営体制
    • 取締役(オンショアでも構いません)の経歴説明
    • 香港の従業員数
    • 組織図・内部管理体制(会計・法律の分野の外注化)
    • 物理的なオフィス有無

提出書類例

銀行によって必要とされる書類は様々ですが、一般的に以下の書類の提出を求められます。

  1. 会社設立証明書 (Certificate of Incorporation)
  2. 営業登録証明書 (Business Registration) オフショア会社の住所証明にもなります。
  3. 年次報告書(NAR1)設立後まもない場合は、NNC1(当局に提出した設立申請書)を提示します。
  4. 定款(Article of Association)
  5. ビジネスプラン(前述)
  6. 取締役・実質的支配者のパスポートと住所証明
    上記Step4のインタビューに参加できない場合、原本証明を提出(弁護士、公証人、公認会計士によるCertify True Copy

    住所証明について、公共料金支払通知を英訳して提出しますが(翻訳証明付き)、日本人の場合、運転免許証の写しを(government issued IDとして)提出できるケースもあります。住所は、登録住所と一致する必要があります。

  7. オフィスのリース契約とフロアプラン
  8. 資産状況の確認の為親会社や取締役の銀行口座残高のコピー
  9. 口座開設に関する取締役議事録。
    上記STEP4の際に取締役にサインを求める銀行もあります。
    こちらから事前に全取締役サイン済みの議事録を提出が可能な場合があります。

単一取締役制度

2014年施行の新会社法(香港法第622章)により、取締役が1名にて会社説明が可能になりました(以下、「単一取締役会社」)。

単一取締役会社の場合、上記STEP4にある取締役インタビューについて、出席が必要な取締役は1名になります。その法的根拠として、定款にて、取締役1名により、取締役会決議ができることを提示する必要があります。よって、会社設立書類準備の段階から注意が必要です。

しかし、銀行によっては、単一取締役会社の株主・実質的支配者にも出席に同時に出席を迫れられるケースがありますので、慎重に交渉する必要があります。

上記記事に関するご質問などございましたら、お問い合わせください。

オフショア法人の徹底解説【最新情報も提供】

私は香港弁護士として働いています。昨今はオフショア会社に関する問合せが多くあります。今回はオフショア会社に関してご説明します。

オフショア法人ってなんだろう?

オフショア会社が今、何時になく世界中で注目を浴びています。「オフショア会社」の定義は諸説ありますが、一般的に、会社設立・運営において以下の要素を提供可能な管轄・国・州(以下、「国」)を指します。オフショア諸国の共通点として産業として金融業に特化し、実質的ビジネスが行われる国内市場(「オンショア」)とは別の国になります(「オフショア」=沖合・海外)。

  1. 低税率・非課税(詳しくは税務専門家にお問い合わせください。)
  2. 容易・低コストの会社設立・維持が可能
  3. 株主・取締役の最低人数1名、且つプライバシーを保護する
  4. 住所貸与及びノミニー・エージェントの代理により、株主・取締役はオンショアに在住

オフショア法人をオフショアってどんな国々?

著者は、香港の会社設立(Company Service) の専門家であるものの、経験上、良く活用されるオフショア諸国の比較表を以下まとめます。

地域 法体系 法人税率 (%) 取締役
最低数
(居住義務)
株主
最低数
取締役・株主
開示義務
最低
資本金 監査 年次報告書
BVI* カリブ 英米 x 1(x) 1 x US$1 x x
セイシェル インド洋 英米 x 1(x) 1 x US$1 x x
サモア 南太平洋 英米 x 1(x) 1 x US$1 x x
パナマ非居住者 中南米 英米 x 1(x) 1 x US$1 x x
ルクセンブルク 欧州 大陸 12.5 1(x) 1 x CHF50,000 x
シンガポール アジア 英米 非居住者 x 1 (✓) 1 SG$1 x
香港 アジア 英米 非居住者 x 1(x) 1 HK$1
脚注:BVI=British Virgin Island, 「x」は該当・義務なし、「✓」は該当・義務あり。
法体系は英米法系 (Common Law) 若しくは大陸法系(仏・独・日本)。
シンガポール・香港の法人税はそれぞれ最高 17%・16.5%(優遇措置有)ですが、オフショア目的は非課税。

そもそもオフショアで会社設立するのは合法なの?

「パナマ文書」事件にて、オフショア会社が脚光を浴びましたが、一般的に、オフショア会社設立は合法で、汎用性は様々ですが、伝統的に投資・運用の目的で使用されます。

ご参考までに、香港証券株式所に上場しているオフショア会社が多数ありますので、主な金融都市にて認められている会社形態といえます。

オフショア諸国は税率が低いため、経由するだけで節税効果がありますので、「租税回避行為」との見解があるようですが、それは見立ての問題であると著者は考えます。

香港はオフショアで、オフショア法人設立は可能?

それでは、香港はオフショアなのでしょうか。前述の4項目を照らし合わせますと、
1.低税率・非課税について、居住者は非課税で、居住者について16.5%です(優遇措置により低減な税率は可能です)。

2.会社設立はほぼ1週間で完了し、最低資本金がHK$1で、設立・維持費用を抑制できます。

3.株主と取締役の最低人数はそれぞれ1名ですが、株主・取締役の個人情報が開示される法律です。また、後述のノミニーを活用した場合でも株主・取締役の個人情報を開示する必要があります。

4.ノミニー・エージェントの代理により、株主・取締役はオンショアに在住することは可能ですが、2018年3月施行のSignificant Controllers Registry 法制により、会社として登録住所にて、株主、実質的支配者(Significant Controller)、取締役、会社秘書の台帳を保管する義務が課されました。よって、バーチャルオフィスによる住所貸与のサービス(上記台帳の保管なし)が違法になりましたので、注意が必要です。

オフショア法人に関するご質問・不明点などあれば、お問い合わせからご連絡ください。

著者

小原 淳(Jun Obara)
Managing Partner, Visence Professional Services Limited
enquiry@visence-japan.com

1978年静岡県三島市に生まれ、14歳で渡米。以後中学から大学院卒業まで米国で過ごす。Juris Doctor (法職博士号)と米国NY州弁護士資格を保持。

2007年日本に帰国後は、外資系証券会社及び日系銀行にて、コンプライアンスオフィサー・社内弁護士として金融法務及びストラクチャードファイナンス業務を経験する。
2012年に香港に移住後は、国際法律事務所において、日本企業の企業買収を含む、香港・中国・アジア諸国進出に関する助言や証券・投資顧問会社設立のサポートに携わる。 紛争解決の分野においても、欧州自動車メーカー及び関連日本子会社が関与する日本・アジア地区に て発生した製造物責任・リコール問題の紛争解決において尽力し、また日本企業が関与する米国訴訟・調査・捜査におけるeDiscovery対応の経験もある。

2017年、ビジネスの多様性に柔軟に対応するためコンサルティング会社Visence Professional Services Limitedを設立し、法律知識を活かし、香港富裕層の対日イ ンバウンド投資の総合ビジネスサポートをする傍ら (http://www.visence-japan.com/)、日系企業の香港・中国・アジア進出のサポートにも全力を注いでいる。
米国NY州弁護士、香港弁護士 (not practicing)
Juris Doctor
日証協外務員・内部管理責任者資格
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香港法人が中国で企業所得税を課税されるPermanent Establishment(PE)とは

私は香港で税務アドバイザーとしての10年以上の経験があります。香港は「中国へのゲートウェイ」といわれることもありますが、香港と中国ではそれぞれ別の税法が適用されています。そのため、Permanent Establishment(PE-恒久的施設)の問題は香港と日本同様、香港と中国でも発生します。

https://startuphk.jp/pe-hkjp/

中国におけるPEとは

Permanent Establishment(PE-恒久的施設)とは事業を行う一定の場所等をいいます。中国の企業所得税法においてPEとは「中国において生産経営活動に従事する機構・場所」をいい、管理・営業・事務機構、工場や天然資源の採掘現場、役務提供の場所、建築・据付等の現場および営業代理人を含むとされています。

中国にPEを有する香港法人のような非居住者企業はPEに帰属する所得につき企業所得税を納付する義務があり、税率は中国企業と同様の25%です。

中国・香港租税協定に基づいてPEを分類してみると、次の3つに分けられます。

  • 固定施設PE
    事業の管理の場所(支店、事務所、工場)や6か月超の期間存続する工事現場
  • 代理人PE
    企業を代理して行動し、企業の名において経常的に契約を締結する権限を行使する者
  • 役務提供PE
    企業またはその使用人が行う、コンサルティング業務を含む役務の提供。同一または関連するプロジェクトのために任意の12ヶ月のうち累計で183日を超えて継続して役務提供を行う場合

固定施設PEは代理人PEは比較的わかりやすい概念だと思います。ただ役務提供PEは複雑な点もあるので、さらに以下で説明をします。

役務提供PEとは

2010年、中国の国家税務総局は中国とシンガポールの租税条約の解釈に関する通知(いわゆる75号通達)を発行しています。この75号通達は他の租税条約の類似規定にも適用されることとされており、詳細は以下のようになります。

役務提供PEの判定基準

  • 対象役務:建設、技術、管理、デザイン、研修、コンサルティングといった多様な活動
  • 同一または関連するプロジェクト:商業的な一体性を有する
    例えば、一つのマスター契約でカバーされている、同一の者が異なる契約の下で役務提供を行っている等の場合には、たとえ契約を複数に分割したとしても一つのプロジェクトとみなされます。
  • 累計183日:中国への最初の入国の日からプロジェクト終了の日まで
    この累計は役務提供に従事している個人毎の累計ではなく、プロジェクトに従事するいかなる人が入国していれば1日とカウントされますので留意が必要です。

出向者のPE問題

75号通達では、香港法人や日本法人のような中国外の親会社が中国子会社に従業員を出向させる場合、子会社のリスクと責任おいて当該出向者を管理監督するならば、つまり75号通達にある「真の雇用主」が中国企業であれば、中国外の親会社は中国にPEを有さないとみなされます。出向先の中国企業が真の雇用主とみなされるための要件は以下の通りです。

  • 中国企業が当該出向者に対し命令権を有していること
  • 当該出向者が中国企業の管理・責任の下に勤務すること
  • 派遣元に支払う報酬が当該出向者の労働時間に基づいて算定される(もしくは個人の賃金と関連性がある)こと
  • 当該出向者の役務提供に必要な道具は主として中国企業により提供されること
  • 出向者の人数および資格は中国企業により決定されること
    上記要件を踏まえ、派遣された出向者が中国外の派遣元企業のために働いているとみなされた場合は、上記で述べた役務提供PEの判定基準に従ってPEの有無を判定する必要があります。

出向者給与の送金

中国企業が真の雇用主である出向者に対し、香港法人のような中国外の親会社が給与を直接支払っていても、その事実のみをもって、親会社が中国にPEを有することにはなりませんが、親会社が立て替え払いした給与については中国企業に対し請求を行い、中国企業の費用として認識されなければなりません。

ところがこのような立て替え払いを行うと、中国外の親会社に対して中国企業が提供した役務の対価とみなされ送金時に課税されるという例が散見されますので、中国企業による直接支給により課税リスクを低減させることを検討する必要があります。

日本法人が香港で事業所得税を課税されるPermanent Establishment(PE)とは

私は香港の公認会計士として、企業に10年以上税務アドバイザーを提供しています。香港で税務を考える上で論点になるPermanent Establishment(恒久的施設)の問題があります。今日はこのPermanent Establishment(PE)について考えます。

Permanent Establishmentの概要

Permanent Establishment(PE)とは恒久的施設を指し、日本・香港租税条約上では、OECDモデル租税条約に従い、「事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と定義されています。

このPEを有する日本法人はそのPEの形態に関わらず、実質的に香港で事業を行っているとみなされ、香港PEに帰属する所得につき、香港で事業所得税が課されます。つまり香港に法人を有していないものの、実質、法人と同機能を果たして事業を行っているとみなされ、香港源泉の所得に対し、事業所得税が課されることになります。

これだけではよく分からないという方が多いと思われますので、これを日本・香港租税協定に基づいて分類してみると、次の3つに分けられます。

  • 固定事業所PE
    事業の管理の場所(支店、事務所、工場等)
  • 建設工事PE
    12ヵ月超の期間存続する工事現場
  • 代理人PE
    企業を代理して行動し当該企業の名において契約を締結する権限を常習的に行使する者

例えば、日本法人が香港に支店や事務所を有し、事業活動を行っている場合は、その日本法人は香港にPEを有しているとみなされ、例え香港法人でなくても、香港源泉の所得につき事業所得税が課されます。

具体例で説明しましょう。日本で高級バイクを売っている会社があるとします。彼は香港の富裕層相手にも高級バイクを売ろうと思い、香港のシェアオフィスを拠点に、バイクを売り、売上を立てます。お金は日本の銀行口座に振り込んでもらうことにしました。この場合、香港にPEを有しているとみなされ、課税されます。実際にはシェアオフィス宛に、課税通知が届くことになります。(ちなみに、こういったケースではビザなしでの商行為が問題になることもあります。ただ、税務局は香港源泉なのか否か、もしくはインカムゲインなのかキャピタルゲインなのかのみを評価します。)

代理人PEについては留意が必要です。日本法人が香港で代理人を任命し、香港で営業活動を行う場合、当該代理人が、日本法人の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使し、企業に代わって営業活動を行う場合、香港代理人は日本法人のPEとみなされ、その事業所得に対し税金が課されます。

しかし、通常の方法で業務を行なう仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人(独立代理人といいます)を通じて事業活動を行なっている場合には、PEとはなりません。あくまで日本法人が実態として香港で事業を行っているか否かが論点になります。

一方、下記のような準備的・補助的な事業についてはPEには該当しないこととしています。

  • 法人に属する物品または商品の保管、展示または引渡しのためにのみ施設を利用すること。
  • 法人に属する物品または商品の在庫を、保管、展示または引渡しのためにのみ保有すること。
  • 法人に属する物品または商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有すること。
  • 法人のために物品若しくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
  • 法人のためにその他の準備的または補助的な性格の活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
  • 上記を組み合わせた活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有し、また、その活動の全体が準備的または補助的な性格のものであること。

委託販売税

香港では、日本法人のような非居住者が香港で委託販売を代理人を通じて行う場合には、売上に応じて課される委託販売税があります。具体的には、日本法人の委託を受けて販売をする香港の業者は日本法人への売上送金の際にその売上の1%以下の支払を留保し、四半期ごとに税務当局に申告・納税する義務がありますが、実務上は0.5%を適用しています。

ここで規定されている代理人の定義には、非居住者との関連において、以下の内容が含まれます。

  • 香港内において非居住者の代理店・代理人・管財人を務めており
  • 非居住者が何らかの香港源泉所得をその者から得ている

Permanent Establishment(恒久的施設)の議論いかがでしたでしょうか。代理人PE話は追って説明する予定です。こういった点は税務アドバイザーなど専門家の経験が生きる分野です。もし気になるなどあれば、お問い合わせ下さい

【香港の税金を徹底解説!】不動産所得税の概要と実務

私は香港の公認会計士で、不動産に関わるビジネスにも関わっています。香港にとって不動産は主要産業です。不動産に関わる税金はいくつかありますので、今日は概要をなるべく噛み砕いてご説明します。

香港の税金―不動産所得税の概要

不動産所得税は、香港内の不動産から賃貸収入を稼得する香港不動産所有者に課税され
課税所得に対し15%の税率を掛けて算定されます。

また物件のサブリース事業を行う納税者は不動産所得税ではなく、事業所得税が課されます。これは当該納税者は不動産の所有者ではないためです。

具体的に税額は、賃貸収入総額から、建物の維持修繕コストとして20%を控除した金額に、15%を掛けて計算されます(賃貸収入 × (1 – 0.2) × 15 %)。

税務申告

課税年度は4月1日から翌年3月31日までです。不動産賃貸所得を不動産所得申告書(Property Tax Return)に記載の上、申告します。

また不動産所得税の課税所得がある場合は、例えIRDから申告書が送付されなくとも、課税年度終了後4ヵ月以内(7月31日)にIRDへ課税所得がある旨を通知する必要があります。IRDは、提出された書類を基に課税所得を査定し、賦課通知書を納税者に送付します。

香港の納税には予納制度が導入されており、税金を納付する際は、確定年度分の納税に合わせて、翌年度分の予納も行います。詳細につきましては、関連記事をご参照下さい。

https://startuphk.jp/hk-tax/

香港の税金―不動産保有に係る税金

香港にも日本の固定資産と同様の不動産の保有に係る税金があり、その主なものにRatesがあります。Ratesは政府が定める不動産評価額を課税標準として5%の税額が課されます。このRatesは事業所得税・給与所得税・不動産所得税といった所得にかかる税金と異なり、Ratesの通知書に従い4半期毎に納税する必要があります。また予納制度はありません。

香港の税金―不動産取引にかかる印紙税

印紙税は、書面によって履行される不動産取引に課税されます。不動産取引が活発で、価格の上昇が著しい香港では、印紙税が不動産価格抑制策に一役買っています。

今まで香港政府が導入した主な抑制策は、

  • 住宅用物件の印紙税引き上げ
  • 特別印紙税の導入
  • 買主印紙税の導入

があります。

住宅用物件の印紙税引き上げにより、以前に比べ税率が倍になっています(最高税率が4%から8%に)。

特別印紙税は、住宅用物件の短期売買を抑制するため、3年以内保有での売却には、保有期間に応じて追加で最高20%の特別印紙税が売買価格に対し課されます。

買主印紙税香港永住居住者以外の投資目的による住宅用物件の売買を抑制するために導入され、香港永住権カードを保持しない買主には追加で15%の買主印紙税が売買価格に対して課されます。

不動産は香港の主要産業であり、香港経済に大きな影響を与えるものです。価格が上昇を続ける香港の不動産は日本を含む各国投資家からも注目を受けています。不動産関連の税金について興味がある場合、どうぞお問い合わせ下さい。